一昔前の話で恐縮ですが『我が子3人全員を東京大学に行かせたお母さん』が脚光を浴びていました。

テレビにも出演されていて偶然私も見ていました。

 

テレビを見ている限りでは否定的な意見が多かったようです。

私もどちらかいうと否定派です。

理由はまず子どもは同じ環境で育った兄弟であっても性格は全然違います。

兄は穏やかで平凡な人生を望むけど、弟は向上心溢れる人格なんていうのは普通にある話。

 

『子ども全員が東大に行った』

 

まぁ、もちろん3人とも才能に恵まれていて、3人とも東大進学を望んでいた場合もあります。

ただ『3人のうち誰かはもっと他にやりたいことがあったんじゃないの??」と感じるのです。

 

問題ある東大生はどんな人か

東大生が起こす事件は度々流れます。

またその事件から

「東大生で学力は優秀でも人格的に問題がある学生がいる。今の教育のあり方は間違っているのではないか」という論調がなされます。

 

「要は勉強ばかりではダメなんだな」ということです。

 

『勉強ばっかりではダメ』

これは多くの人が分かってる感覚のはず。

 

実際に小中学校の現場でも『勉強ばっかりやってればいい』という風潮はありません。

勉強もスポーツも遊びもそれぞれに尊重されますよね。

 

『勉強ばっかりではダメ』

多くの人が当たり前の感覚で分かっています。

 

ただこの感覚がブレる教育現場があります。それはどこかというと特別支援教育です、

 

方法は特別だけど分量は普通

私は特別支援学校で先生をやっていました。

期間は9年ほど。知的障害や身体障害など沢山の子どもたちと出会ってきました。

 

その経験の中で出た答えがあります。

それは

障害ある子を教える方法は特別。だけど分量は普通である。

ということです。

 

例えば自閉症の子がいるとします。

自閉症の子には絵や写真や視覚で分かりやすく説明した方がやはり良い、と思います。

スケジュールも極力渡した方がいいでしょう。

自閉症の子でスケジュールの必要ない子も出会いました。ただ本人的には欲しいようです。

 

それで渡してみると行動面で良い点が見られました。

まぁ、そこらはさじ加減ではありますが出来るなら渡す方がいいのかな、と思います。

 

つまり障害ある子は教え方は、地域の小中学校に通う子と比べたら「特別な方法」が必要です。

 

ただ勉強や療育をする量は「普通」でいいんです。

それが障害ある子は教え方は特別。でも分量は普通でいい。

ということです。地域に通う小中学校の子らと同じ。マイペースであるべきです。

 

その分量を間違えるとどうなるのか。

”いびつな発達”になります。

それは『勉強しすぎて人格的に問題を抱えたまま育った東大生』と同じです。

 

ベタな経験が大切

学力は優秀だけど人格に問題あると結局子どもは苦労してしまいます。

ある程度のバランスが必要なんです。

 

そして人格形成は教えるものではなく経験させるものです。

 

その経験はよくある世間的な経験です。

休みの日は遊園地行ったり、買い物に出かけたり、誕生日を祝ったり。

こどもの日や七夕、クリスマス会やお正月を楽しんだりなどです。

 

そんな世間的な経験をその子の出来る範囲でやることです。

それらを全部省略して勉強や療育だけに集中するとバランスが崩れます。

 

時に専門家は厄介になる

『今、バランスがとれているか分からない・・』

という人もいると思います。

 

特別支援学校の先生やっていた自身の経験から言いますと「専門家」がときに厄介です。

 

というのもバランスの取り方は本人と親御さんが決めればいいことなんです。

本人、または親が違和感を感じたら量を減らせばいいし、気持ちがのるなら増やせばいい。

それが適正なバランスです。

 

ところがここに「専門家」が入ってきてバランスが崩れることがあります。

専門家とはお医者さんや先生ですね。

 

先生によっては子どもではなく、先生のペースで「もっと頑張りましょう」「今のうちに出来ることを」と励ましてきます。

でもその先生に悪意は全くなく善意です。善意で本気で思って励ましています。

 

専門家に本気の口調で言われたら「そういうのだ」と思ってしまうのが通常です。

 

病院へ行ったらお医者さんの言うことは否応なしに信じますよね。

車やパソコンなど専門分野の高い買い物では店員の言う通りに買うことが多いはずです。

 

服買いに行って店員さんの専門用語の羅列や「今これが流行なんですよ」という接客に参ったことないですか。

流行であることと自分が似合うかは別の話です。ただ詳しい人に言われると「そういうものか」と思うものです。

 

それと同じようなことが特別支援教育でも起こります。

小中学校では「もっと勉強させないと」とバランスを崩すほどの猛プッシュする先生はいませんが、なぜか特別支援教育ではいるのです。

 

分量は普通でいいんです

これはどんな先生でも納得するでしょう。普遍的な話。

 

100点満点で学校を卒業していく子はいません。

誰でも何かしらの欠点を抱えたまま学校を巣立ち社会へ出て行きます。

 

周りを見ても100点満点の人は果たしているでしょうか。

 

「100点満点何でも出来ること」ではなくバランスが大事なんです。

 

そのために意識しておいてください。

認識すると行動が変わります。

 

「横断歩道は危ない」という意識が生まれると、安全確認して渡れるようになるのと同じです。

意識が生まれると危険回避が出来ます。

 

障害ある子とない子の教育の違いは「方法」です。

教え方の方法が違います。自閉症の子にはスケジュールなど視覚支援が必要、といったことですね。

 

ただやる分量は同じなんです。

障害ある子でも、ない子でも勉強する分量は同じなんです。

分量を間違えるとバランスが崩れます。

崩れると『勉強ばかりで東大へ行った大学生』と同じとなります。

 

バランスを崩す原因は色々ありますが、一つは先生などの専門家が引き起こす場合があります。

これは特別支援学校でも小中学校の支援学級でもあることです。

 

教え方は特別だけど分量は普通でいい

そう意識してみてください。バランスがとれますから。