「うつ病」と診断され、その後立ち直った筋ジストロフィーの青年の体験談です。

私の知人に景(きょう)という名前の筋ジストロフィーの青年がいます。

 

筋ジストロフィーというのは筋力の低下が起こる筋疾患です。幼少期は歩けますが、徐々に筋力が低下して車椅子に乗ることになります。

筋ジストロフィーの景(きょう)は小学校時代にうつ病を患いました。今で克服しています。

 

景がうつになったきっかけは学校で、治ったきっかけも学校です。

景の経験は、今、うつ病を患わっている方のヒントになると思い彼から話を定期的に聞いています。

以下、景のうつから立ち直った体験談です。

 

うつ病から立ち直った経緯。景のコラム

うつから抜け出せず、中学に上がった。

とりあえず、地域の人間とは関わらないように 寮のある学校に行くことにした。

今でも、思い出す。
ちょうど、
入学式は雨が降っていた。なんか 自分の心の中と、一緒やったな。

最近になって、気付いた。
うつが抜けきらんのになんで、行けたんやろう。
たぶん、やけになってた。

その学校の寮には、障害の持った子供が小学生~高校生まで広い年齢層で、
面白い指導員がいて、最初は 面倒に思っていた。

こっちの思いは関係なく心の敷居を越えてくる。
先輩、指導員の関わりを遠くから見ているとなんか、知らん間に笑っていた。

指導員と子供の間に距離はなく、いつも馬鹿馬鹿しいような面白い事を一緒にやっている。

そんな中に、気付けば、入っていた。
ほとんど、無理やりに近いような(笑)

2年が過ぎる頃には自分が鬱である事をいつしか忘れていた。

鬱から抜け出すにはやっぱり、環境を変える。
それが一番。
自分を壊すようなことからは逃げる。

これは言い方、悪いな。
戦略的撤退とか言うやつにしよう。

いじめでも、なんでもその場所に止まろうとしがみつくから辛いだけで
しがみついてる壁から手を放してみたら違うことに手を使える。

後は、鬱を忘れるために
なにか好きなことに手を使う。
そういう事やと思う。

もうひとつ、なんでもいいから笑うこと。

これも大事。鬱の人には難しいことっていうのは分かる。
好きなことをやっていくうちに
時間がかかっても笑えるようになる。

そして、周りの人間、家族は 特に、とりあえず、環境を変えてあげて欲しい!笑らかしてあげて欲しい。

鬱の人が 自分で動きはじめるまでしばらく、見守ってあげて欲しい。

無理に動ける訳ないから。鬱を克服するのは、時間がかかる。
これを忘れないように、お願いします。

毎日は、後ろ向きで漕いで進む
ボートに似てる。
先のことは見えないけど、
過ぎた分は 景色になる。

誰かのこんな言葉を
今回は、書いて終わります。
また、そのうちに現れます。

 

「逃げる」を否定してはいけない

「自分を壊すことからは逃げる」と景は言っています。

実はこれは文字にすると簡単ですが、実際は難しい。多くの場合は「誰かに迷惑をかけるんじゃないか」「もっと出来ることがあるのでは」といった周囲のことや、環境を変える怖さから辛くても現状維持を望むものです。

 

ただ、私も以前2ヶ月間引きこもり状態になったことがあります。

その経験からも「逃げるべきだ」「立ち向かってはいけない」と思います。一部悪い状況に立ち向かって解決した体験談ありますよね。

立ち向かうことを否定はしませんが「それが出来たら今、そんなに苦しんでないですよね?」と私は思います。

 

少し私の引きこもった話と変わるきっかけになった話をします。

私は社会人になってから引きこもりを経験しました。社会人になって私は中学校の先生になったんです。

ですが生意気というか、周りに合わせない性格なのでベテランの先生から反発を受けました。

 

ある日、校長室に呼ばれて学年の先生7,8名による私のダメだし大会が始まりました。

 

それでも私は「ここで辞めちゃダメなんじゃないか」「まだ出来ることがあるのでは」と思いました。

でも数日後、・・まぁここではちょっと書けないですがとある先生から注文がついたんです。

そして「それをすることを職員会議で宣言してください」と言われました。

 

「私はそれは無理だ」と思いました。「どうしよう」と思い、帰りの自分の車に乗ったんです。

エンジンを掛けてハンドルを握ると急に手足が震え出しました。

 

「これはヤバい。このままだと自分自身が壊れる」

そう思って、そこから車を降りて校長室へ。「辞めます」と宣言しました。

 

でも「逃げた自分」をずっと否定していたんです。辞めたあとも自分を否定し続けて「自分はダメな人間なんだ」という声がずっと聞こえていました。

私は、昔お世話になった恩師に話を聞いてもらいにいきました。

恩師は話を全て聞いたあと「逃げるのを否定したらダメだよ。せっかく逃げたのにそれを否定したら苦しみが終わらない。逃げたことにならない」そう言われました。

 

その一言で私の価値観はガラリと変わったんです。

そこからまだ引きこもり状態は続くのですが「自分はダメな人間なんだ」という声は消えました。

たまに頭をよぎることがあっても「意味がないから考えない」として避けることが出来たんです。

 

 

「逃げる」とは見た目も響きも格好悪いものです。褒められものではありません。

でもそれにこだわると永遠に前に進めないこともあります。

 

「無理だ」と思ったら逃げてください。そして逃げた自分を否定せず、楽しいこと、嬉しい時間を増やしてください。

景の話にあるとおりです。

景がうつ病から立ち直ったのは周りの明るい雰囲気や嬉しい出来事。そうやって感情を動かすんです。

 

この記事は筋ジストロフィーのお子さんを育てている保護者の方を想定していますが、お子さんの好きなことや、夢中になれることは何ですか?

 

お好きなことや嬉しいこと、他の子は興味を示さないのに、なぜかそれを好きな物事。

それが「その子らしさ、自分らしさ」です。

 

「自分らしさ」を育んでください。やがて笑顔になり、景のように「あの頃はこうだった」と語れるようになりますよ。