おそらく日本中どの地域でも雨後のタケノコ状態で増えまくっている放課後デイ。
そうなると確率的に悪い業者も参入してきますよね。
実際によろしくない業者がいるのでしょう。
保護者の方から聞いた意見が「放課後デイを規制すべき」というご意見。
「お金目当ての業者に参入してほしくない」「素人に子どもを見てほしくない」とのこと。
お気持ち非常によく分かります。
ただ、以前特別支援学校で働いていたのと、卒業生の生活を見てきた経験から言いますと。
現在の乱立する放課後デイは歓迎すべき事態である、と考えております。
先に結論を言いますと、みなさんの地域にある放課後デイを”育ててあげてください”
今は頼りないタケノコかもしれませんが、育てれば立派な竹へと成長するハズです。
障がい者作業所は人材不足
私は今はブログを書いていますが、将来的には作業所経営もやるつもりです。
ただ作業所経営だけで終わる気はありません。その先もあります。目指すは”障がい者福祉のイノベーション”です。
まぁ、「俺さ、障がい者福祉にイノベーション起こすんだ」と周りに言うと
「・・・うん、がんばってね」
と、複雑な表情をされてよく傷ついているのですが、情報収集等は既に始まっております。
まず作業所についてお話しますと、特別支援学校にいる子どもの進路先となる場所です。※もちろん必ず作業所へ行くわけではなく、企業就労する子や進学する子もいます。
その作業所で働く職員さんのお給料なのですが、非常に低いのが現状です。
ある作業所の職員さんに教えてもらいましたが、そこでは30代の男性職員で「大学初任給並み」だとか。
実際「このままでは結婚出来ない」「家族を養えない」ということで転職されていった方を知っています。
このままでは良い人材は出ていく一方となってしまいます。
この原因には給料の問題に加えてもう一つあります。それは「障がい者に人が身近にいない」ということです。
人は身近な選択肢から職業を選びます
この「障がい者が身近にいない」という問題が非常にやっかいです。
人材不足の大きな壁になっていると言っていいでしょう。
人は仕事を選ぶとき、身近な選択肢から選びます。
例に挙げられるのが芸能人での2世タレントです。
一般人には遠い世界の芸能界ですが、芸能人の子どもからすれば身近な世界です。
むしろ会社員や公務員とかの方が遠い世界なのでは、と。
もちろんタレントだけの話ではなく一般人でも同様です。
例えば公務員の家に生まれた人は就職先に同じ公務員を選ぶ傾向が強いです。
親の様子を見ていれば、公務員が大体どんな職業か分かりますから。特に不満がなければ同じ道を選ぼうとします。
同じ理屈で学校現場では親子そろって教師というのもよくあります。
会社員や自営業も一緒ですね。親が会社員なら同じ会社員に。自営業であれば同じ自営業に。
例外はもちろんありますが、傾向として人は身近な選択肢から職業を選びます。
で、障がい者福祉への就職の話です。
就職を考える時期は高校生から大学生までの間となります。
小中学生のころはまだしも、高校生以上となると障がいある人が身近にいない環境になっています。
これが障がい者福祉に人材不足になる一要因です。
ただ例外があります。
身近に障がいある人がいなくても就職先にこの業界を選ぶ人が多い人たちです。
どんな人たちだと思いますか?
答えは特別支援学校に実習へ来た大学生たちです。
「こっちの方がいいな」って思ったんです。
現在先生になるための教員免許を取るには「実習」を受けないと取れない仕組みになっています。
その実習先の一つに特別支援学校があります。
障がい者福祉に興味ない人でも、数日この世界を体験する仕組みがあるということです。
で、ですね。
「実習で特別支援学校の魅力を知って『こっちがいいな』と思い進路変更しました」という先生は多くいるのです。
実習生さんの中には最終日に泣いてお別れを言ってくれたり、実習後も運動会や文化祭のイベントに来てくれたりする人もいます。
たった2日間程度の実習で、ですよ。
私はこの業界魅力がないわけではない、ていうか魅力は十分にあると思っています。
実際に学校の先生でも「特別支援学校の方が自分に合っていると思う」という人は多くいます。
例えば、私が超尊敬する恩人の先生は、昔たまたま障がいある子と関わることがあって特別支援学校に来た先生です。
「地域の学校で先生やってたけど馴染めなかった。でもたまたま障がいある子と関わって「これだ」と思った」ということで特別支援に来たそうです。
障がいある子と関わったのをきっかけに、良さが分かってこちらの世界へ入ってくる人がいます。
障がいある人を身近に感じられるきっかけがあれば、もっと福祉の世界に入る人は増えるはずです。
でもそんな機会はなかなかありません。
福祉作業所で「障がいる人と一緒に」というテーマでお祭り等のイベントを開いたりしていますが、身近に集まるのは関係者ばかりです。これは皮肉とかではなく、通常そうなると思います。
大学生のように「特別支援学校で実習受けないと免許取れない」というような強制力のあるきっかけが必要です。
で、放課後デイなわけです。
「素人が多い」と言われる放課後デイが「良いことだ」という思う理由がここにあります。
「素人が多い」というのは悪いことばっかりじゃないんです。
むしろ今まで知らなかった人が障がいある人を身近に感じるようになるなら、これはメリットです。
放課後デイを通して障がいある人を身近に感じる人が増えます。
放課後デイは世の中に眠っている障がい者福祉に適した人材を発掘してくれる存在になるはずです。
放課後デイを育てましょう
断言できますが良い先生の条件は知識ではありません。
研修や勉強をしたが優秀である保証はどこにもありません。
ぶっちゃけ、知識はあるけど実践は感情任せにやっている人はどこにでももいます。
知識って教科書や本では本当の意味では身に付かないものです。
正直に言いますと。
学校の先生はよく研修してますが、あれはほとんど意味ないでしょう。※元同僚がこの記事を読まないことを切に願う(笑)
知識は実践してナンボです。
「実践しながら知識を入れる、その知識でまた実践する。上手くいなかければまた知識を入れる」
このサイクルで能力は向上していきます。
放課後デイは最初素人で後から知識を入れていきますが、実はこれが最も理に適った方法です。
最短で能力を身に着ける方法とも言えます。
例えば中学や高校で学んだことはみなさんほとんど忘れているでしょう。
それは使ってないからです。
小学校低学年で学んだ九九や時計の読み方、漢字などは覚えているはず。
それは普段から使っているからです。
勉強は座学だけでは身になりません。※まぁ天才ならなるかもしれませんが。
学校の先生の研修が「ほぼ無駄」というのは、すぐに使う予定がない知識を勉強していることが多いからです
もし放課後デイでおかしな対応をする職員がいたら。それは知識不足のせいではありません。
勉強しているのに変な対応をしているのは、その職員の人間性が問題なのです。
知識を入れても人間性が問題であれば、必ずどこかで不適切な対応をしだします。これも断言できます。
立ちあがったばかりの放課後デイは頼りなく、勉強不足な職員もいるでしょう。
ただ人間性に問題がなければすぐ使う知識を入れるだけで2,3か月すれば優秀な職員になるはずです。
放課後デイは競争が激しいので、そのうち学校の先生顔負けの人も出てくるかもしれません。
放課後デイに規制をかけても、新規参入が減って競争がなくなるだけです。
例えばドコモやauやソフトバンクなど携帯電話会社もライバルがいるから新サービスを考えるわけです。
電話会社がドコモのみになったら料金はもっと高騰し、サービスは悪化するでしょう。
競争があれば悪質な放課後デイは売り上げが下がってやがて退場となります。最終的には努力する優秀な放課後デイが残ります。
実はこの競争原理がないのが福祉の辛いところです。
私の知人で質の悪い障がい者作業所へ行っている人がいます。聞けば聞くほど、かなりひどい内容。
「作業所変えたら?」と言うと返ってくる答えが「他に行けるところがないんです」という返事です。
これは障がい者作業所に新規参入がなく数が足りないせいです。
数があれば「他の作業所へ行きます」と言えますから。
「ドコモに不満だったらauに変えればいい」というのと同じ理屈です。
私はお金目当であっても新規参入が増えるのはいことだと思います。
というよりお金というメリットがなければ、わざわざ身近でない障がい者福祉の世界に入ってくる業者はまずいないでしょう。
というわけで、皆さんの住んでる地域で雨後タケノコ状態で乱立する放課後デイは育てていけばやがて立派な竹になります。
周り回って子どもたちのためになると思いますよ。
ちなみに。
「良い放課後デイってどんなとこですか?」と質問されることがあります。
詳しくは分かりませんが「オープンなところ」が最低条件だと思います。
仕切りがやたら多く「迷路作ってんのか??」と思われるような放課後デイはちょっと怪しいです(笑)
十中八九「子どもが出ないように」「中を見られないように」という心理が働ていると推測します。
「見学いつでもどうぞ」と言っているところですね。それ以外のことは実際に中に入って判断するしかないか、と。