子どもの気持ちとは?
まずは私の失敗談から。
特別支援学校で私は先生していました。
仕事は子どもたちに色んなことが出来るようになってもらうことでした。
個別の指導計画がそのままです。
課題を達成出来たか、出来ないかが大事なわけです。
「課題達成が最も大事」
私はそんな流れに染まりきった時期があるのです。
ある自閉症の男の子の話です。
彼は高校生で電車に乗っての自主通学が出来ます。
彼は授業の合間に音楽を聴くのが好きでした。
ただ好きな気持ちを抑えきれなくて音量を上げてしまいます。
クラス中に響くので彼には適度な音量で聴くように言いました。
ですが彼は音量を下げようとはしません。無視して聴き続けます。
私は自閉症の子特有の教え方を実践していきました。
文字やイラスト、時間制限を設けるなど手段を考えていました。
彼は様子はさほど変わりません。
やがて彼と私は「やるか、やられるか」の戦いのようになっていきました。
ある日、彼は体育の時間に足をくじきました。
保健室にも行って応急処置をしましたが、放課後になると足を引きずっていました。
彼は一人で帰れると言い張りましたが「念のために」ということで私は下校時、後からついていきました。
彼は下校集団から遅れていきます。
私は横に並んで肩を貸しました。
駅まで二人三脚のような形で歩いて行きました。
駅まで着きましたが、電車に乗って彼の家まで送ることにしました。
駅から降りて、再び二人三脚で家の前まで行きます。
家に着いての別れ際、彼は「ありがとう」と御礼を言ってくれました。
翌日から彼の態度は少し柔らかくなっていました。
私は発想を変えました。
「彼の好きなものはなんだろう?」
「どうすればこの子は楽しい一日が過ごせるだろう?」
そう考えるようにしました。
彼は好きなアニメやストーリーがあります。
私はそれに詳しくなって彼との話題にしました。
やがて私の姿を見ると「先生、あのね・・・」といつもの話題を話してくる関係になりました。
その頃になると彼の音楽癖は軟下しました。
「音下げて」の言葉がけで音量を下げるようになっていきました。
愛情には残量がある
子どもが求めているのは気持ちだと思っています。
自分のことをどれだけ考えてくれているか、要は愛情です。
学校とは課題達成の場です。
ですが求められているのは常に愛情です。
「子どもには愛情残量があるんだ」と思っていてください。
スマートフォンのバッテリー残量と同じです。
愛情にも残量があり増減します。
笑顔を向けたり、安心する言葉かけで残量は増えます。
批判や無視など、気持ちをないがしろにされると減ります。
残量3の満タン状態であると活動的になり、思いやりと希望を抱きます。
残量0になると活動も学びも止まります。
若干ハズいですが
私は支援学校時代、子どもたちと目が合ったときはなるべく微笑むようにしていました。
小っ恥ずかしいですが「私はあなたの味方です」と伝えていたつもりです。
さらに小っ恥ずかしいですが、この習慣は私の母親が私にしていたことでした。
母は私と目が合うと必ず微笑んでいました。
小学校高学年くらいから「目が合ったら必ず微笑むなぁ」と気づきました。
中学生くらいに「なんでいつも微笑むんだ?」と考えました。
「そうか、俺のことを愛してくれてるんだ」と結論づけました。照れますが。
その時期から私は母からの愛情を疑いません。
「間違いなく俺は愛されている」と思っています。
中学生まで気づかなかったのは申し訳ないですが、母が私へ何千回と微笑んだ結果は出たのだと思います。
お子さんがほしいのは愛情です。
保障しますが、愛情で満たされていればそう悪くはならないんです。
子育ては課題ではなく笑顔から始まると思っています。
「私が微笑んだらこの子の愛情量は増えるんだ」とお子さんとの時間で思ってみてください。
よろしければ目が合えば微笑んでみてください。
「私はあなたの味方だよ」
「愛しているからね」
そんな想いを込めるとお子さんは安心感を覚え、いつか意味に気づくと思います。
感動は人を成長させると思っています。
「愛情」という実感は最たる感動です。