いきなり話が脱線するようですがそうじゃないですよ。

 

柔道で強くなるには「心・技・体」という考え方があります。

 

健全な「心」

磨かれた「技」

頑強な「身体」

 

この三つが揃って一流の柔道家になれるという意味です。

 

「心・技・体」という考えは柔道のみならず色んな分野で見かけますし、子どもの教育にも当てはまります。

 

私は以前は特別支援学校で先生をやっておりました。

障害者スポーツの普及活動は今でも続けていて社会人の障害ある方とも交流があります。

 

そんな中でよく思うのは『心の部分が置き去りになっているのでは??』ということです。

「出来るか、出来ないか」という目に見える成長に注目して、見えない心の成長が置き去りになっていると感じるのです。

 

心の成長が置き去りと感じる場面は物事に対して受け身だったり、『自分に自信がない』『今が楽しくない』という子どもや卒業生に出会ったときなどです。

 

もっと言えば心の部分にもっと注目した方が出来ることも増えます。

また今まで越えられなかったような高い壁を超えるのは「心」の部分が鍵です。

 

今回そんなお話です。

 

9歳で初めて会話が出来るようになった

とある自閉症の女の子がいました。

彼女は幼いころから言葉は発さないものの、学力等や生活能力は高くて地域の小学校に通っていました。

ただ言葉数は少なく発するのは「あ」「うん」など一言程度。

 

ところが9歳の段階で急に言葉を話し始めます。

「お父さん」「お母さん」などの名詞や簡単な自分の気持ちを言うようになったのです。

 

きっかけは彼女の好きな歌でした。

 

家や車の中で好きな歌をリズムに乗りながら聴くのが好きで、それを続けていたら急に話し始めたそうです。

photo by ASU Art Museum

 

 恋をきっかけに頑張り始めた女の子

身体障害ある女の子の話です。

彼女は上肢下肢ともに強い緊張があるため、日常生活の多くが困難です。

 

彼女は中学生になって急にリハビリ活動に熱心になりました。

きっかけは『好きな人が出来たから』

 

『二人きりでデートしたい』

『今のままだとヘルパー同行でしか外出できない』

 

そう思うようになってリハビリ活動に熱心に取り組むようになりました。

 

周りからの意見を聞きすぎると・・・

このような話、障害の有無関係なく、誰でも聞いたことあるし経験もあるでしょう。

人が大きく能力を伸ばすきっかけは「好き」「やりたい」という気持ちからです。

 

最近では「ポケモンGOをきっかけに自閉症の子が外へ出て遊ぶようになった」というのが似た例です。

 

世の中で活躍している人も同じですよね。

凄い結果を出す人は必ず好きなことを起点にしています。

障害ある子が大きく成長するのも好きを起点にするのがほとんどです。

 

そんなこと知ってるよ。よくある話じゃん

 

と思う方も多いのではないでしょうか。確かにありふれた話ですよね。

しかし障害ある子・・いや障害の有無は関係ないのかもしれません。

 

「好き、やりたいことから力は大きく伸ばせる」

 

みんなが知っているはずのこのことをなぜか実践しきれてない現状があるとは思いませんか。

 

それが問題なんです。

9歳の自閉症の女の子のように大きな成長を生むためにはもっと好きなこと、やりたいことを追求した方がいいのです。

 

分かっているはずなのに、なぜこの状況が生み出せないのか。

 

原因の多くは他人の意見を聞きすぎているからです。

 

ディスりますが、一つの原因となっているのが先生の意見です。

 

先生の仕事は「出来ることを増やす」です。

ゆえに先生はその子の出来ない部分に目を向けます。

「歩けるように」

「話せるように」

「落ち着いて行動できるように」

それらが間違っているわけではないんです。子どもの可能性が広がることなのでやっておいた方がいいのです。

 

ただ先生の中には「今それをしないと大変なことになります」「お家でも取り組んでください」といった意見を言う人がいるはずです。

 

周囲の人たちがリハビリに取り組んでいる中、自分たちだけがそれをしないのも抵抗を感じる場合もあるでしょう。

育児書や療育関係の書籍・情報サイトも「こんなことが出来るようになりました」という情報を流します。

 

学校にいけば集団行動やみんなと同じであることを先生や周りが求めてきます。いわゆる同調圧力というものです。

 

「すべきこと」

「将来のために」

「みんながやっているから」

 

そんな周りからの意見が「今を全力で楽しむこと」から遠ざけてしまうのです。

そのことが却って子どもたちの成長を阻めています。

 

「好き、やりたいことから力は大きく伸ばせる」

これを本当に実践するためにはそんな周りからの声を振り切る必要があります。

 

外からの声ではないんです。

「自分はこれをやってみたい」

「自分はこうありたい」

そんな自らの内側からくる声に耳を傾けることが必要なんです。

 

親も自分の声を聞くこと

他人の「しなさい」ではなく自分の「やりたい」が大事です。

その積み重ねが「好き、やりたいことから力は大きく伸ばせる」ということにつながっていきます。

 

ただこれだけでは実践しにくいと思います。

 

他人の「しなさい」よりも自分の「やりたい」が大事。

これを習慣づけるにはまず保護者の方から実践してみることをおススメします。

 

というのも私が特別支援学校の先生をしていて多くの保護者の方から話を聞いて分かったことです。

子どもが自分のやりたいことやありたい姿を追いかけるようになったきっかけは「親もやりたいことをやり始めた」というのが多いのです。

 

親がやりたいことを始めたら子どももそうなった、ということです。

 

この記事を読んでいる方は障害ある子を育てている親御さんが多いと思います。

仕事や周囲の人間の声を聞きすぎて自分のやりたいことやありたい姿を忘れてはいないですか?

 

もし自信がないならコミュニティに入ってみることをおススメします。

どんなコミュニティかというと、まぁ平たく言えば私のような人間がいるコミュニティです。

 

そんなコミュニティないよ

 

という方もおられるでしょう。

自画自賛してるような感じですが、私はこのサイト夢へのEn-Zin(エンジン)を一つのコミュニティの場として開設しています。

En-Zinの意味は「円陣」です。画像で言えばこんな感じ。

photo by Jeff Boyd

 

円陣を組む状態では周りの声よりも自分たちの声が聞こえているでしょう。

自分たちの声、つまり「自分たちは何を目指しているのか」を確認している姿です。

 

周りの意見も大事です。独りよがりになってはいけませんから。

でも自分はどうしたいのか、どうありたいのか、も同時に大事なんです。

 

それは心の成長にもつながるし、幸せを感じる時間にもなります。

 

とはいえ一人だけ周りの声を聞かず、やりたいことやるのはなかなか疲れるもの。

たまには誰か会って「これでいいんだな」と確認することが大事です。

 

まずはあなたから他人よりも、自分の声が聞こえるようになってみてください。

それがお子さんにも良い影響を与え、飛躍的な成長を遂げるきっかけになるはずです。