特別支援学校を卒業後に行くことが多い作業所。どういったところかご存知でしょうか??

photo by Kyle James

photo by Kyle James

 

私は以前は特別支援学校で先生をやっており、小学部、中学部、高等部と全ての学部を渡り歩いておりました。

 

懇談のときは「卒業後に向けて考えていることはありますか?」という質問をよくしていたのですが、

「卒業後といってもイメージが湧かないんです」

との返事が非常に多いのです。

 

言われてみれば、職場実習が始まるのは早くても中学部後半です。

身近に福祉作業所は多くないでしょうし、イメージは難しいはず。

 

さらには「将来のことを考える余裕がないんです・・・」と深刻な事情をおっしゃる方もいます。

 

ならばこのブログを読んでください(笑)

いちいち学校の先生に聞くのもおっくうでしょうし、要点を解説いたします。

 

これはブログの宣伝とかそんなんじゃなくて、見通しを持つことで心に余裕が生まれるのです。

余裕が生まれると冷静な判断が出来ますし、ポジティブにもなれます。いいことだらけです。

 

例えば多動性や衝動性の強いお子さんであっても、卒業後は落ち着いたりするものなんです。

それにもちゃんとした理由があります。

 

今回、なぜ落ち着くのかの理由も含めた生活介護型、就労移行支援B型、A型の作業所についてお話しします。

 

生活介護型

障がいの程度で言えば、常時介護を要する人が対象となります。食事、移動、トイレなどのさまざまな生活の場面で、ですね。

知的障がいの軽い人でも必要な介護量が多ければ生活介護となります。

 

内容的には仕事よりも、日常生活を重視するところが多く、ゆったりとしているところが多いです。

仕事以外にも散歩や音楽、ダンスなどの活動を用意したり、入浴サービスなどを提供しているところもあります。

 

作業所の経営方針にもよりますが「仕事しなさい!」と強く求められることはまずないでしょう。

「仕事は出来る範囲でやってくれたらOKです」というスタンスです。

 

内容は紙すきや空き缶、ペットボトル仕分けなどの下請けや内職作業が中心です。

 

「誰も仕事しなかったらどうするの??」

 

と思われるかもしれませんが職員さんも一緒に同じ仕事をするので、何とかなるのです。

実際には「一日中寝ている」といった人もいます。※”放置してる”とかじゃないですよ。ちゃんと理由があって寝ています。

 

ゆったりとしている分、お給料は数千円というところが多いです。

ただ柔軟な対応をしてくれることが多く、その分のメリットがあります。

 

「無理せず過ごせるのが生活介護」と考えればよいでしょう。

 

就労継続支援B型

「B型作業所」と呼ばれることが多いのではないでしょうか。言いにくいですしね。就労継続支援B型って。

B型を簡単に説明すれば「生活介護よりも仕事を重視した作業所」です。

 

対象となるのは「日常生活の大半を大体は一人でこなせる人」くらいが目安です。

例えば「移動や食事は一人で出来るけど、トイレは見守りが必要」といった具合です。※区分認定という基準はありますが、ややこしいのでカットして説明しています

 

仕事内容は部品組み立てなどの内職作業やクッキーづくりなど食品加工を行うところもあります。

生活介護よりも仕事重視です。

その分お給料は高くなります。1万~2万円といったところが多いですね。

 

就労継続支援A型

「A型、B型?なんだそりゃ」と思われるでしょう。

 

A型と先ほどのB型の違いは「雇用契約があるか、どうか」になります。

雇用契約=最低賃金の有無、と考えてください。※ただ最低賃金には例外規定があり、賃金は若干下がることもあります。

 

お給料が高い分、求められることも多く、作業や日常の生活の多くは自分ひとりの力でやることになります。

 

対象となるのは「一般企業に就職するのは難しいけど、生活面はかなり自立している人」です。

ちょっとわかりにくいでしょうか。「B型以上~一般企業未満」といったところです。

 

実例では

「一般企業にチャレンジしたけど、合わなかったのでA型作業所にいます」

「特別支援学校卒業したけど、すぐに一般企業は難しそうなので、今はA型作業所にいます」

といった方たちが働いております。

 

A型では一般企業よりも障がいに対する理解度は高く専門のスタッフもいます。

「1日4時間」などの短時間勤務など柔軟に対応してくれます。

 

「短時間勤務ならは一般企業のパート雇用でもいいのでは??」

 

と思われるかもしれませんが、A型はもっと柔軟性があると考えてください。

 

例えば一般企業では「すみません、今日は休みます」ということが続けば、立場がかなり危うくなりますが、A型では柔軟に対応してもらえるということです。※もちろんただのサボりはダメですよ。障がいによる理由が必要です

 

作業所に入ると落ち着く子は多い

photo by Björn Söderqvist

photo by Björn Söderqvist

 

もちろん例外はありますよ。卒業後の環境になじめず、他の作業所へ移る子は毎年一定の割合でいます。

どこの学校でも入所前にたくさんの実習をすると思いますが、実際入ると合わない場合出てきてしまいます。

 

とはいえ、不安を煽っているわけではないのです。

 

今までの内容にあった通り、作業所には生活介護型やゆったりなB型など幅があるので、お子さんに合ったところがきっとあるはずですから。

 

また作業所は学校と違って、行事がそんなに多くありません。仕事内容も大幅に変わることはまずないので、お子さんは安定しやすいのです。

 

イメージつきにくいかもしれませんが、学校は「行事が多すぎる」と考えてみてください。

運動会、文化祭など大型行事があって、その合間にも細かい行事がありますよね。

 

授業もずっと同じではありません。種類も国語や音楽、体育など多岐に渡ります。苦手でもやらねばなりません。

出来なければ、先生は「頑張ろう!」と励ましてきます。

 

ほとんどの子がプレッシャーを感じているハズです。

 

環境の変化で言えば毎年クラスは変わり、担任も変わります。

 

非常に落ち着きにくいのが学校なのです。

とはいえ環境の変化に慣れるのも一つの勉強なんですけどね。

 

子育てにお疲れな方へ

photo by Peter Pham

photo by Peter Pham

 

大人になっても職場が変わると新しい仕事や人間関係に慣れるのは大変です。

子どもも同様。課題設定があったり、環境の変化が大きい学校は、なかなか大変なのです。

 

それに比べ作業所は大体毎日が同じ仕事となっています。

 

運動会や文化祭といった行事はあったとしても自由参加が原則であり参加しても本人が楽しめるよう配慮してくれるはずです。

 

例えば「縄跳びは苦手だから無理」といっても学校みたいに「頑張って飛べるようになろう」とは言われません。

※中には「頑張ろう」という職員さんもいるかもしれませんが”例外”です。

 

学校は教育機関で、作業所は就労場所ですから求められることが違うのです。

「何でもできる」必要は実はなくて、それぞれの個性にあった働き方を考えてくれるのが作業所です。

 

実際に学校では問題の多かった子が作業所では落ち着いて仕事している、といった事例はあります。

 

個人的にはここら辺に問題解決のヒントがあると思うのですが、プレッシャーって目に見えないじゃないですか。

 

例えば、みなさんの過去を思い出してみてください。高校受験や大学受験、入社試験などみなさん相当プレッシャーに感じたはず。

あのころって情緒不安定だったと思いませんか??

 

誰でも「自分は将来どうなるんだろう」と心配しているものです。

 

学校にいる時期は誰でも情緒不安定な時期なのです。しかしそれを過ぎると次第に落ち着いていきます。

 

今、子育てで非常にお疲れの方もおられるかと思います。

そんなときは「今は情緒不安定な時期なんだ」と考えてみてください。

 

それはみなさんが学生時代に持っていた「得体の知れない不安感」と同じようなものです。

 

いつか「あぁ、そんな時期もあったなぁ」と振り返れる時期が来るはずです。

特別支援学校の高等部卒業式では、そんなお母さんの思い出話を沢山聞きますよ。お知りおきください。