小さいころ観た映画を大人になって観返したら予想外に面白かった
なんてことないでしょうか。
自閉症(サヴァン症候群)の兄(ダスティ・ホフマン)と経営危機の自動車ディーラーの弟(トム・クルーズ)が主人公の映画「レインマン」の話です。
私は高校生~大学生くらいまで、映画にどっぷりハマっていました。手あたり次第観ており「レインマン」も観ています。
当時の感想としては「ヒューマンドラマ」として面白い、というくらいでした。
ただその後障がいをもった人と関わる仕事をした影響からか「すげぇよ、この映画!」と大絶賛したいと思います。
主役2名の演技力もさることながら、脚本も素晴らしい。また自閉症の人と関わったことある人なら「あー分かる」と頷ける場面も多くあるでしょう。
この映画で良かった点2つとイマイチな点1つをあげます。
良かった点① 凄すぎるダスティ・ホフマンの演技力
この映画を作るにあたり、何度も取材を繰り返し、専門家に監修してもらったそうです。
自閉症演じるダスティ・ホフマンはモデルとなった実在の自閉症の人に何度も会ったそうです。観てもらえば分かりますが、ダスティホフマンの演技力がすごいの一言。「本当に自閉症なんじゃないか」と思えるくらいです。
このリアルさは間近に自閉症の人がいる人には分かるはず。
障がいを題材にした映画って何作もありますが、どこかフィクションと言うか『演じてるなー』と感じることが多かったのですが、今作はかなりリアルに感じることが出来ました。
良かった点② 親密になっていく過程がすばらしい
この映画、脚本もリアルだと感じました。
普段自閉症の人と関わりある人には「あーわかる」と思える場面があってより楽しめるのでは、と思います。
後半になると弟のトムクルーズが兄への理解を深めていきます。
あまり書くとネタバレになるので避けますが、「24時間ずっと一緒にいたから仲良くなれた」というくだりがあります。
これ、すごく分かるのです。
施設での関わりというのは、一日数時間入れ替わりで接することが多いです。療育園でも学校でも作業所でも。
そんな「1日数時間」を何回も繰り返すより、丸1日べったりと過ごす方が親密さは増します。
友達と旅行行くと親密さが増すのと同じ理屈上になりますが、障がいある人、特に自閉症の人はとくに。
丸1日過ごすと、まぁ色んなことが分かるんですよ。良いことも悪いことも含めて。
最後の方になると、弟は兄に対し激怒するどころか愛情を感じていくわけですがその過程も納得。
個人的な話ですが「自閉症の人は最初戸惑うけど、慣れると楽しくなるよなぁ」と思っています。
これは「外国人と仲良くなれるとなんだか嬉しい」という心理と似ているのかもしれません。
基本「理解できない相手は怖い」じゃないですか。外国人でも、障がいを持っている人でも、こわーいお兄さんとかでもね。
でも一旦理解しあえると、怖かった分含め仲は深まります。
物語後半の「質問攻めにされて困る自閉症の兄」以降のシーンは個人的にツボでした。
私自身も経験あり、です。
自閉症の人は関わりが難しく、距離感もあるのですが、それが縮まると何とも言えない喜びがあります。
脚本家がここまで意識して書いたかは分かりませんが、「あー分かる」と思える点がいっぱいでした。
イマイチな点 婚約者の心理描写が謎
大した問題じゃありません。この映画のメインテーマでない部分ですから。
この映画心理描写がよく分かって好きなのですが、婚約者の心の移り変わりが謎でした。
自分が男だから理解できないのか、「女心と秋の空。そういうもんだ」と理解するのが正しいのか。
・・・まぁ、どうでもいいですね。ストーリーの都合上でそうなったのかな(笑)
リアリティと心理描写が○。アクション映画が好きな人は退屈な映画でしょう
ダスティ・ホフマンの演技と脚本が良い点です。トムクルーズ演じる弟の心の移り変わり様も○です。
ただアクション映画が好きという方には退屈な物語展開かもしれません。驚きの展開とかは特にありません。
自閉症という障がいを理解するにも良いでしょう。ぶっちゃけ私は最初障がいある人と関わったときは弟と一緒の反応でした。
本気なのか、ふざけているのか分からず、理解できないことだらけ。こっちの言うことは全然聞いてくれない(笑)
でも一旦理解出来れば、あとはなんてことはなく、むしろ苦労した分かわいく思えたり。
そこらに「分かるわぁ」と鑑賞中、何度も思いました。
普通に映画としても楽しめますし良作だと思います。まだ観たことない方はぜひ。
※レインマンを観て思いだしたのですが「他者理解」という意味で似たような映画「ダンスウィズウルブス(狼と踊る男)」というのがあります。
舞台は西部開拓時代のアメリカです。白人とインディアンの交流が描かれています。
「人を結びつけるのに人種は関係ない」と思える名作です。古い映画ですが「レインマン」が好きな人は楽しめると思います。