世界に入ってから
自閉症の子どもと仲良くなるコツは遊ぶことです。
こうイメージするといいと思います。
自閉症の子は「自分を閉じている」と書きますが、客観性は”閉じている”かもしれません。
周りよりも自分の世界を大事にする傾向が強いでしょう。
では自閉症じゃない人は開いているのかといえば、そんなことはありません。
いわゆる健常者は主観を閉じている人が多い。
他人の言うことが気になって、噂話や世間体を気にします。
それは全てに悪ではないですが、人生の味わいが希薄になるのが健常者の悩みです。
自閉症の子どもたちは、自分の世界を守りたいのです。
他人に興味がないのも少し違います。
彼らは自分の世界に入ってきてくれる人を歓迎します。無理に合わせる気がないのです。
私は小さい頃はガンダムが好きでした。ですが兄はガンダム好きではありませんでした。
ガンダム遊びは1人でしていました。
寂しいから兄の趣味に合わせるのでなく、自分の趣味を1人でもやり続けていたんですね。
大なり小なりの差はあっても、心理は同じです。
自分なりの世界観があって、そこにいることは何よりも楽しいです。
他人に興味がない、ワガママとも違います。
同じ遊びを続けるのも、その世界が楽しくて仕方ないからです。
誰かが一緒にガンダム遊びに入ってきてくれたら、死ぬほど嬉しかったと思います。
この心理を子どもに応用してください。
「この子の好きなもの、世界観は何だろう?」と想像するんです。
「アンパンマンが好きなんだな」と分かったら、私はアンパンマンに詳しくなります。
アンパンマンのイラストを描くのが好きなら私も描くでしょう。下手ですが。
そうやって相手の世界観を理解し入っていきます。歓迎してくれます。
私が養護学校(支援学校)の先生時代の話をします。
戦隊モノが大好きな自閉症の子がいました。
彼はテレビの内容をよくつぶやいていました。
ただこっちの話は聞いてくれません。
彼は必殺技を叫んでいました。
私は一緒に必殺技をやりました。「違う。こうだよ」と訂正されました。
彼はストーリーを語り出しました。
私はオリジナルアレンジを加え、彼好みのストーリーを語り出しました。
彼の世界にヒットしたようです。
私を見かける度に「先生、お話ししよう」と寄ってきてくれるようになりました。
この状態になれば、もう完成です。
「分かった。じゃあお話するから、これしようね」と私の話を聞いてくれます。
そして何よりも、ここを強調したい。
一緒にいて楽しいんです。笑顔で寄ってきてくれるので私は嬉しい。
彼も自分の世界を共有出来て嬉しい。
等価交換とイメージしていいです。
大好きな遊びを提供する代りに、こちらの話を聞いてもらうということです。
コツは心底相手と楽しもうとすることです。
教育しなきゃとか、周りからどう思われるとか考えない方がいいでしょう。
失敗談も話しましょう。
ある自閉症の男の子は遅刻癖がありました。
私は視覚支援や時計を持たせるなど支援方法を追いかけていました。
全部失敗でした。
成功したのは彼は電車好きで、その世界にあった遊びを提供したことです。
私のやり方は教育の世界では多分邪道だと思います。
多数派は「これが正しいからこうしなさい」という教えるスタイルでしょう。
この記事は先生でなく、ご家庭向けに書いています。
私の方法は家庭には強くオススメします。
お子さんとの関係で行き詰まったら、教育的な方法から距離を置いてみてください。
私は一般的な先生とは全然違うベクトルで子どもたちを捉えて働きかけています。
冒頭で話したとおり、彼らは自分を開いています。
他人に気を遣ったら、自分の気持ちが分からなくなるじゃないですか。
大人は客観性を大事しますが、やり過ぎたら誰かのコピーのような人生です。
そんなのつまらないです。
参考までに私はこう考えています。
規則通り、褒められて、認められて、お金を稼ぐのが自分の人生なんてわけがない。
みんなそれぞれに世界観があって、それを表現していくのが楽しい。
どうやったら人生は楽しくなるかは、子どものころ、みんな知っているはずです。
私たちは教育やお金や情報など、外部に目を奪われ思うこと、感じることをなくしていくのです。
そんな姿勢に立てばどうでしょうか。
彼らの気持ちが想像出来てきませんか。彼らは自分でいたいのです。
彼らに何かを伝えたかったら、彼らの世界に入ってみてください。
遠回りのように見えて、それが最短だと思います。
そして何よりも。濃厚で楽しい時間が待っております。
ご家族の方には強くオススメです。