「やってみたいんだけど・・・でも・・・」

「○○が不安だから出来ないよ・・・」

というような”引っ込み試案”なお子さんの成長するきっかけになる方法を解説いたします。

photo by Ka Hei Mak

photo by Ka Hei Mak

 

専門的な表現をするとモデリングといいます。

 

カタカナにするとややこしい感じがしますが、「子どもは背中を見て育つ」といったものです。

誰にでもある心理です。例えば好きな芸能人の恰好やしぐさを真似たりするのもモデリングですね。

 

思春期のころであれば周りの大人、友達、先輩など”あこがれの存在”がいて、その人の真似や影響を受けていたりしていませんでしたか?

 

私自身振り返ってみても、小さいころ出会った”あこがれの存在”がおりまして「あ、俺こういう人になろう」とはっきり意識したことを覚えております。

「子どもがアニメヒーローに憧れてその真似をする」というのも一種のモデリングですね。

 

大人では教えられないことがあるんです

私は学校や塾など教育の現場に10年以上いましたが、あと一歩が踏み出せなくて悩んでいる子に出会うことがあります。

見ててもどかしい気持ちになるのですが「やりたいのにあと一歩が出ない」という状況。

 

分かりやすいのは「好きな子がいるけど話しかけられない」という恋愛に関するものです。これはイメージしやすいですよね。

 

障がいある子の場合だともう1パターンあります。

「行きたいところがあるけど家族以外と出かけるのは怖い」

 

といった経験不足や環境による”引っ込み試案”です。

障がいある子の場合、支援体制がないと不安なので一人で出かけるという機会に乏しく「出かけるのは常に家族と一緒」といった場合があります。

 

それでも本人から話を聞くと「行きたい」という気持ちは強いのです。

でも家族以外の人と行くのは不安なんですね。

 

こういった場合「こうしてみたら?」といった理屈はほぼ通用しません

「行きたいけど怖い。どうしよう」といった順繰りが繰り返されます。

 

根詰めて一つ一つの問題点を本人と話し合って解決する方法もありますが、これは「手助けしすぎ」のように思います。

なぜかというと次回につながらないんですね。

 

至れり尽くせりの支援を入れれば、誰でも出来るようになりますが、それに頼るようにもなります。

こういった場合はもう大人の出番ではないようです。

 

で、モデリングなわけです。

 

モデリングで成長する子どもたち

photo by Juhan Sonin

photo by Juhan Sonin

 

このモデリングの話、あらゆる障がいの子にあてはまります。

友達への意識が強くない子でも意識していたりするんです。

 

いくつか例を挙げますと、引っ込み試案の中学生の男の子がいました。

多趣味なので、色んな物事に興味があるのですが出かける際は常に家族と一緒です。

 

本人の力的にヘルパーさんと出かけるのはもちろんのこと、一人で電車に乗ってでも行けそうな気もします。

懇談でお母さんと話していると「一人でも行けると思うんですけどねぇ」と少しお悩みのようす。

 

というわけで私も「ヘルパーさんと出かけてみたら?」「お母さん忙しいときでも好きなとこ行けるようになるよ」

など理屈で説明しても「わかるけど。でもなぁ・・・」という煮え切らない返事です。

結局は家族以外と出かけることのないまま年度が終わり離れてしまいました。

 

ただ後日談になりますが、お母さんの話で「ヘルパーさんと出かけるようになりました」とのうれしい報告が。

 

きっかけは友達だったそうです。その友達は非常に能動的な子で一人で出かけていき、男の子とも仲が良かったとのこと。

その子含めてお母さんとの3人で出かけていくうちに「僕も一人で外出しよう」という意識が芽生えたのだとか。

 

自閉症のお子さんでも同様です。

実際に友達への関心が高くない自閉症の子でも、クラスの子に引っ張られる形で成長していく姿があります。

 

例えば、障がいのタイプ問わず、特別支援学校で言われるのが、「クラスに本人にとっての兄役、弟役がいると成長しやすい」というのがあります。

 

兄役があこがれの存在です。

兄役をモデルにして良い方向に成長していきます。

弟役はその学んだことを実践し、自らが教える立場になってもらう子です。

 

問題ある子でもこのサイクルに入ると急成長を遂げたりします。

出会いによって子どもは急成長する、というのはよくある話ですが、このパターンが多いです。

 

うまくハマると本人同士の友情も芽生えていきます。

特別支援学校の現場でも兄役だった子が、弟役の子の卒業式に出席してお祝いする、ということが何度もありました。

 

クラスでこの形が出来上がると、大げさでなく自然と子どもは成長していくんです。理想形といえるでしょう。

 

ただ狙って作れるものでもないのが悩みどころ。

ここだけの話、この形が出来ればその年のクラス運営が非常に楽なのです。逆にこれが出来ないとやたら汗をかく1年になります。

 

モデリングを実践してみよう

photo by Tony Alter

photo by Tony Alter

「やりたいんだけど・・でもなぁ」という場合には理屈であれこれ言うよりも、モデリングが有効です。

小さい子であれば「アンパンマンみたいになれるよー」などの言葉を織り交ぜる手もありますね。

 

学校ではクラスに1人は”兄役”になれる子がいるものですが、その子に”兄役”を意識してもらうよう声掛けをします。

「みんなを引っ張っていってやって」みたいな感じです。

 

家庭での応用ですが、お子さんにとって良い影響を与えてくれそうな子がいれば、その子と遊んでもらうのが一番ですが、そうはいかない場合もあるでしょう。

 

実は保護者の方が頑張ることでモデリングを示すことも出来ます。

「子は親の背中を見て育つ」というじゃないですか。

お父さん、お母さんが今よりかっこいい姿を見せるのも一つの方法です。ちょっとしんどいですけどね(笑)

 

一つ確実に言えるのは、あんまり大人が手を出しすぎると子どもには達成感がありません。

外見上は成功したように見えても、本人に達成感がなければ長続きはしないものです。

 

「やらされている」と感じたらそこに達成感はもうないんです。

ポイントは「自発的かどうか」です。

自分で「やろう」と思ったことであれば達成感があります。

 

モデリングの良いところは自発的というところなんです。

自発的にとった行動が成功すると非常に強い達成感が得られます。

その達成感は自信となって次の行動力につながります。行動すればそれは経験となりさらなる自信へとつながります。

 

「○○しなさい」といった言葉かけよりも、自発的な行動を促す環境を整えるのが一番です。

引っ込み試案なお子さんも内心は「出来るようになりたい」と思っていますので、引っ張るよりもきっかけを作るのが良い方法でしょう。

 

これは私個人の話ですが、自分の意志で始めたことで成功したときの子どもの成長ぶりは感動的です。

「うぉーできたー!!」

って感じでめちゃくちゃ嬉しそうな表情が素晴らしいのです。ほんと泣けますよ。

photo by wsilver

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