夢は大きな感動で分かる

私の友人に悟志君がいます。

彼は20代前半。

滋賀の養護学校(特別支援学校)卒業で、車椅子に乗って生活しています。

彼は自分の道を探しています。

 

4月初頭には、私と彼とで東京へ行きました。

東京は彼の意識を変えたようです。

「ずっと東京にいたい」

数週間経っても、私と会えば、彼は同じことを言い続けています。

 

悟志君の東京への目的はあるバンドのファンで、ライブに参加したいことのこと。

ただサイン会など、ライブ後のイベントに参加するなら、宿泊する必要があります。

 

彼はビジネスホテルに泊まったこともないので、諸々の保険として私は付き添いました。

ただどこかの場面で一人で行動してもらおうと思っていました。

 

東京滞在は実質2日程度。

その中で大きな分岐点となったのは、池袋でのライブでの出来事です。

 

ライブの日、彼はほぼ丸一日を1人で過ごしました。

池袋で分かれたときの写真↑

 

夜にホテルで落ち合うことを約束して午前中から解散です。

生まれも育ちも彼は滋賀県。不安は多くあったと思います。

 

意地悪して私は彼に課題を課しました。

「昼飯はマクド、ガスト、サイゼリヤみたいなチェーン店は禁止な」と言いました。

 

彼は「分かりました」と笑顔で答えていました。

意味は伝わったと思います。

 

お昼は車椅子で入れる和食屋を見つけ、節約家の彼には珍しいうな丼を食べたとのこと。

※実際に彼から送られてきた証拠写真↑

店員さんの愛想よく、うな丼の味も絶品だったそうです。

 

ライブは18時から。

会場は下調べしたはずが、階段がありました。車椅子では上り下りが出来ません。

事前連絡していなかったため、会場スタッフは彼を助ける余裕がなかったそうです。

 

彼はファンに助けを求めました。

「下調べしたんですけど、階段があってしまいました。降りるのを手伝ってもらえませんか」

そう頼んだそうです。

 

ファンの人たちは心良く助けくれたとのこと。

 

会場へ入れば、ネット上の知り合いだったファン仲間が目の前にいます。

「滋賀県からよく来てくれたね!」と歓迎してくれたそうです。

 

「助けましょうか?」「タクシー呼んだ方がいいですか?」など声かけも随時もらったとのこと。

押しつけではない優しさを彼は感じたそうです。

 

ライブは無事終了。

結果、ファン仲間と意気投合し、記念写真を撮り、再会を約束して分かれたとのこと。

 

「ホンマに泣きそうやった」

悟志君は、そう振り返って話していました。

 

ライブ終了後に、宿泊先で私と合流しました。

溢れるように一日の感想が出てきます。

次第に目標を語り出しました。

 

「今回はライブとサイン会で帰ったけど、次は食事会にも参加したい」

「今度は一人で東京来るわ」

「家族で北海道旅行行きたいなぁ」

「お金いるなぁーって思った」

 

「えぇ感じやん」と私が言うと「言葉がワァーって出てくる」と嬉しそうでした。

 

教えない、支援しない、本人の好きなようにさせる。

今回はうまくいった話ばかりですが、本人任せにすれば失敗もあります。

 

ただ得られる感動は桁違いです。

池袋での一日は悟志君の一生の思い出になると思います。

振り返れば転機となるかもしれません。

 

悟志君は会うたびに「東京が・・・」と言ってきます。

「僕は何かを捨てないといけない」

そう言うようにもなってきました。

 

彼を一人にさせて良かったと思っています。