深い優しさを知る男。

先日、車椅子に乗る悟志君と東京旅をしてきました。

彼は滋賀県在住。一人暮らしをしています。

彼はお金に余裕あるわけではありません。

東京行きは節約を重ねての実現でした。

 

普段から食事、飲み物など100円単位で節約しているそうです。

「東京来るためにもやし多めの食生活やった(笑)」と話していました。

 

東京の帰りは夜行バスです。

「早めに駅ついてお土産みたい」と彼は言いました。

着けばお土産屋コーナーを何度も行き来します。

悟志君は自分へのお土産がほしいわけじゃないんです。

友人、日頃お世話になっている人など3人分、他人のために探しています。

 

私は好奇心に駆られて「何円のを買うんだろう?」と思ってみていました。

彼は安さで選んではいませんでした。相手の好みに合ったものを選んでいました。

 

もう一つ。

彼は間違って生クリームのお菓子を買ってしまいました。

シュークリーム好きの人のお土産に買ったのですが、生菓子と気づかなかったのです。

 

賞味期限は明日まで。渡す日は明後日。

買ってから気づいて、彼はそのお土産をどうしたか。

私にくれました。

お値段は1000円以上します。

「お世話になったので、食べてください」

彼はそう言って京都駅での別れの際にくれたのです。

 

感動で旅の疲れがふっとびました

 

彼の優しさには理由があります。

悟志君は複雑な家庭環境で育っています。

 

その中で多くの先生や支援員さんが彼を理屈なく助けていました。

詳細はここでは書けませんが、仕事だから、義務だからではなく純粋な親切だったようです。

 

悟志君は成人しました。

一人暮らしをして、ある程度自由に出来るお金を持ちました。

 

100円を節約する彼が1000円のお土産を買えるのは、そんな過去の経験からです。

彼はいつ、どこで優しくすべきかを知っています。

 

優しさには二種類あります。

浅い優しさと深い優しさです。

 

浅い優しさは表面は整っていますが、いざというときは冷たくなります。

深い優しさは普段いい加減でも、踏ん張り時で相手の心を掴みます。

 

悟志君は深い優しさの持ち主です。

授業や理屈で学んだのではなく、体験で学びました。

 

以前、彼と話してたら、こんなことを言っていました。

 

「色んな場面で、色んな人が浮かんでくる」

「こういう場面ではあの人の真似をしよう、と思い出す」

「僕は真似をしているんだ」

 

そう言っていました。

今回のお土産で言えば昔、悟志君を喜ばすためだけに親切にした人がいるのでしょう。

 

上から目線のような話になってしまいますが、浅い優しさの世界で留まっている人がいます。

学校の先生であっても浅い場合もあります。

 

優しさには深さがあることを意識してみてください。

最も人の心を掴むのは深さです。