物事を決めるのが苦手
自分の意見が言えない
引っ込み試案
などなど。辛口ですが先天性の身体障害から車椅子に乗る子どもに多くみられる特徴です。
私は特別支援学校で先生をやっておりました。
車椅子の乗る子らの担任を持ったことが何度もあります。
沢山の子どもたちとやその保護者の方と関わらせていただきましたが、自分の意見をはっきり言えたり、自分のことは自分でやる、といった子には環境に共通点があります。
簡単に言えば「自立心を育てるにはコツがある」ということです。
総じて車椅子に乗る子は社会性の高い子が多く、あとは自立心が育てば鬼に金棒です。
ぜひ参考にしてください。
まずは車椅子に乗る子の環境について考えてみる
特別支援学校であっても、地域の小学校や中学校でも同じです。
車椅子に乗る子の環境とは常に誰か大人がそばにいる状態です。
家にいるときは親や兄弟だったり、学校では先生や支援員さんです。
言うまでもなくそれは必然性のあるものですよね。
また良い点もあります。
車椅子の乗る子は礼儀正しかったり、情緒の安定した子が多い、と思うところですが、それは周りの大人と触れ合う機会が多いためでしょう。
大人が側にいることは社会性を見に着ける上で非常に有利な点です。
ただ物事何でも副作用があって、大人が側に居続けることには副作用があります。
その副作用とはいわば社会性が育ちすぎるのです。
言い方が悪いですが大人に依存しやすい、とも言えます。
分かりやすく伝えるために直接的な表現をしますね。
冒頭にあげた引っ込み試案だったり、自分の意見が言えない、という子は常に大人が側にいてあれこれ指示を出しています。子どもはそれに「従うだけ」となります。
車椅子に乗る子でこういった姿はよくある話です。
繰り返しますが大人が側にいるのは車椅子に乗る子にとって必然性のあることですから。
ただ、大人が側にいながらも非常に自立心の強い子もいます。育てる方法はあります。
元々社会性は高いのです。なので自立心を育てれば、高い社会性と相まって非常に心の強い子になります。
というわけで実例を挙げながら、自立心を育てるための方法を紹介いたします。
あえて「突き放す」という感覚
ある脳性麻痺の男の子は電動車いすに乗っています。
身体機能的には上肢も下肢にも強い緊張があります。
こういった場合、日常生活の多くは全介助となるのですがこの子はそうではありません。
食事はもちろんのこと、着替えやベッドの移乗も一人でやり切ります。
着替えは寝転びながら、身体を色んな方向に動かして着替えていくのです。かなりスゴイ。
さすがにトイレは自分で出来ないので、日常的に大人は側にいますが自立心が非常に強い子に育っています。
礼儀正しさもあり、社会性も十分です。
この子のお母さんに子育てのコツを聞いてみました。
返ってきた答えはあえて突き放したとのこと。
「あえて」です。
「これは無理かな」と思えることでもあえて手伝わない。まずは一人で出来るかやらせてみる。
とはいえ、心情的にお母さんは突き放すことに非常に迷いがあったそうです。
「やりすぎているかな」
「助けた方がいいのかな」
と色々悩まれたとのこと。
でも「出来るのでは??」と思い挑戦してもらったとのことです。
例えば着替えの際は、子どもの側に着替えを置き「自分でやってみて」とあえて一人で任せてみたとのこと。
結果時間はかかりながらも、着替えることが出来るようになりました。
ここでの問題は「出来ることが増えた、増えない」ではありません。
心がどう育ったか。自立心が育ったのか、がポイントです。
結果は育っていますね。
私はこの子は着替えが出来なくても、心の面で良い結果を生んだと思います。
あえて突き放すことで、自立心が育つからです。
とはいえ。
この突き放す方法は「参考にならないなぁ」と感じた人もいるはずです。
子どものもつ機能的な問題や親子の性格のタイプなど条件がそろわないと再現出来ないでしょう。
このお母さんはさらに非常に良いことを言ってくれています。
その良いことを紹介しながら次に再現性の高い方法を説明いたします。
お互いにやりたいことをするのが一番
私がそのお母さんの話を聞いていて「いいな」と思ったのは「私が楽をしたいから」とも言ってくれたことです。
子どもが自分で着替えるようになったら、お母さん自身の負担が減ります。
そうなると、お母さんはその時間を好きなことに使えますよね。
それがいいんです。
「私が楽をしたいから」
それでいいんです。私はこのことを言ってくれたお母さんに非常に感謝しています。
「あ、やっぱり。俺の考えた通りだ」と確信をもたらしてくれたからです。
断言しますが、そのお母さんは決して愛情のない方とかではないのです。
小さいころは子どもの障害に対してどんな療育方法があるのかを必死で探し、実際に色んな病院を回ってご自分で調べています。
学校のことも真剣です。授業の様子も見にきますし、進路のことも真剣に考えています。決していい加減なのではありません。
愛情がないのではなく、あくまで子どもと対等なのです。
そして自分を飾らない、そんな方です。
私は今まで沢山の保護者さんと交流させていただきましたが「対等の感覚」を持っている方はどんな障害のお子さんも保護者の方も非常に楽しそうです。
そして子どもを「突き放す状態」に持っていくのは「私とこの子は対等である」という感覚を持つこと。
と言っても非常に分かりにくいですよね。
具体的にそれがどんな行動になるのかというと「親である時間を減らす」ということです。
これをもっと具体的にいうと、保護者の方が自分に素直になることです。
ご自身の「やりたいこと」「やってみたいこと」をするのです。
例えば「外で働きたい」と思うことがあるなら我慢せず働けるように行動してみてください。
ヘルパー事業所を有効活用するなど方法はあるはずです。
「友達と遊びたい」と思うなら都合をつけて遊びに出かける時間を工面してみてください。
趣味の時間でも構いません。やってみたいこと、興味あることはないでしょうか。
「私が楽をしたいから」「息抜きしたい」という気持ちを否定しないことです。
それが結果的に「突き放す」状態を子どもにもたらしてくれます。
突き放されると子どもは自分で考えるようになります。
その経験と時間が自立心を育てます。
自分の気持ちを大事にしてください
このサイト夢へのEn-Zin(エンジン)に共通するテーマですが、「もっと自分のやりたいことや自分の気持ちを大事にした方がいい」と私は思っています。
それは道徳的な意味ではなく、方法論としてそうした方がうまくいくのです。
車椅子の子だけではありません。
自閉症の子の例でも、お母さんが子育てよりも自分の時間を大切にしたことによって落ち着いたことがあります。
お母さんやお父さんが自分のやりたいことをすることで、子どももやりたいように出来ます。
子どもだけがやりたいことをやるのではなく、お父さんやお母さんも同じようにやりたいことをやっていきましょう。
どちらかが無理をして合わせるのではなく、どちらともがやりたいように出来るポイントがあるはず。
そのバランスの一点をとるのです。
「自分が楽をしたいから」
という理由でもいいんですよ。そこは子どもに頑張ってもらって、どうしても出来ないことは助けましょう。
金八先生みたいなこと言いますが、親と言う字は「木の上に立ってみる」と書きます。
「立」+「木」+「見」=親
ですよね。
普段は木の上から立ってみていればいいんです。大きな問題なければ親は木の上で好きなことをしていい。
ただ子どもがピンチになったときは木から下りて助けてあげてください。
そのくらいの距離でいると子どもに自立心が芽生えます。親も好きなことが出来ます。
お互いが無理をしないでいれば、楽しい時間も増えていきます。
子育てでお疲れ気味なら
もし心がお疲れ気味なら。
おそらくそれは自分の本心に反した行動をとっているからです。
自分の気持ちに素直になってみてください。
子どもに良い影響を与えるのは親子の穏やかな時間。お母さんやお父さんの笑顔が何よりです。
「親子ともに楽しんでいる時間が最高の時間である」ということです。
親が笑顔になるには余裕が必要です。
余裕を生むには無理をしないことが大事。
無理をしないということは自分の気持ちに素直になること。
心に沸き起こる気持ちを否定しないでいいと思います。
理想なのは「この子と接したい」と思うときに接することですよね。その状態が親子にとっての理想の時間。
とはいえ現実的にはなかなかうまくいかないかもしれませんが、自身に沸き起こる気持ちまで否定しないことです。
私は自立心のあるお子さんの保護者さんと何人も出会ってきましたが「子育てに全力投球」というわけでもないんです。要所要所で好きなことをし、また子どものためにも時間を使っています。
良い意味でいい加減だったりしますから。
やりたいことやっても大丈夫ですよ。