「コミュニケーション力がもうちょっと伸びてくれればなぁ」とお悩みの保護者の方にお知らせです。
と取材していくうちに思いました。
地域差や学校差はありますが、特別支援学校の自立活動で取り組まれていることの多い臨床動作法の話です。
※画像はイメージですよ
「そもそも臨床動作法ってなに?」
と問われると心理学的アプローチによる運動動作訓練です。
くだけて言うと
「身体の動きを通してコミュニケーションをとりましょう」ということです。
コミュニケーション手段って何がある?
コミュニケーションでもっとも使用頻度の高いものは言葉ですよね。
想像してみてください。
「言葉を使わずにコミュニケーションを取りなさい」と言われたらどうしますか?
どうやって自分の意志を相手に伝えますか?
多くの方が身振り手振り、写真カードなどの視覚を使った手段を考えるでしょう。
ただもう一つ方法があります。
それはみなさんが生まれてすぐ感じたもの。
小さいころは頻繁にありますが、大きくなるにつれて疎遠になっていくものともいえるかもしれません。
それは身体を通したコミュニケーションです。
自閉症の子と仲良くなれたと思えた瞬間
私は今はこうやってブログ書いてますが、以前は特別支援学校で働いておりました。
学校の先生は副業禁止で情報発信にも気を使いますが、今はフリーです。気兼ねなく情報配信できます。
まぁ、それはどうでもいい話でして、私が先生のころの経験を。
自閉症の子への身体を使ったコミュニケーションの大事さの話です。
私はこれまで自閉症の子どもの担任をしてきましたが、言葉のやり取りが難しい子は写真カードや文字によるやり取りが多くなっていきます。
そうなると指示的な内容が多くなるのです。
一日の予定の提示や「○○しましょう」「○○はしません」といったことですね。
そんな中で「あ、この子との距離が縮まったな」と感じる出来事は身体を通してのコミュニケーションによるものが結構な頻度であります。
例えば担任をしていた高校生で自閉症の男の子が足を怪我したことがありました。
彼が歩きにくそうだったので私は肩を貸して数キロ歩き、家まで送りました。
そこで担任もって2年目で初めての経験がありました。別れ際に彼は「ありがとう」とつぶやくように言ってくれたんです。
そしてその「ありがとう」をきっかけに私からの働きかけに以前よりも応えてくれるようになりました。
もう一つ例を。
小学校低学年くらいであれば抱っこが出来ます。
感覚遊びが好きな子は私に「抱っこして」など遊びを求めてきたりします。
普段やり取りの少ない子でも、そうしていくうちに距離が縮まるんです。
最初は疎遠だった自閉症の子が向こうから手をつないで来てくれたり、私を見たら近寄ってきたりと良い変化が見られようになりました。
視覚支援は何かを伝えるという点では優秀ですが、コミュニケーションという部分では身体を通しては有効な手段です。
ただ小さい子なら別ですが、小学校高学年くらいにもなると抱っこしたりも難しいじゃないですか。2,3回やるとこちらの腰がやられるでしょう(笑)
で、”身体を使ったコミュニケーション方法”ともいえる臨床動作法の出番なわけです。
見た目は運動訓練に見えますけども
臨床動作法は元々は脳性麻痺など身体障がいを持った人に向けて生み出されたものです。
”動作”法ですからね。元は身体活動の分野なのです。
ただ”臨床”がついています。臨床の意味は「患者と接する」ですが、臨床心理学の意味でとらえると理解しやすいでしょう。
臨床動作法は「心理リハビリテーション」とも言います。
「臨床動作法は自閉症など発達障がいの人たちにも有効である」というのは心理リハビリテーションの部分が強いのです。
言葉でのコミュニケーションが難しいなら身体を通してやり取りしましょう、ということです。
少し具体例を挙げて説明します。
臨床動作法は肩を上げるなどの動作を通して受ける側(子ども)とする側(先生)がやりとりをします。
二人の意志が通じ合って身体の動かし方を学び、「楽しい、気持ちいい」と感じられれば成功です。
臨床動作法は見た目は運動訓練で先生主体に見えます。
ですが主体は子どもにあります。
どういうことかというと「子どもの気持ち」が大事なのです。
先生が答えを示して、子どもはそれに合わせるのではなく動作を通してお互いの妥協点、つまりはお互いが「良い」と思えるところを探していくということ。
・・・分かりにくいですよね。
要はいわゆる「訓練」のような熱血体育会系の動作訓練ではないのです。
「腕立て伏せ100回はじめ!」みたいなノリではない、というイメージです。
「楽しい」や「気持ちいい」「出来た」など気持ちを大事にしながら行うのが臨床動作法です。
これ以上は論より証拠で興味ある方は実際体験に行ってみるのが良いでしょう。
臨床動作法ぶっちゃけ話
さて「臨床動作法は自閉症のお子さんに有効ですよ~、一度体験をどうぞ」で終わっては私の存在価値がありません。
私は臨床動作法の専門家ではありませんし、関係者でもないので中立の立場で”ぶっちゃけ話”もいたします。
ここまで読んでいただければ何となくお分かりかと思いますが、臨床動作法は奥が深いアプローチ法です。
よって昨日、今日始めたような先生ではその骨子を理解できないでしょう。
私は実際の現場も知っていますが、見た目からの印象では”熱血体育会系の運動訓練”に思えるはずです。
そして中には本当に熱血体育会系な人もいます。
ただこれはその人が悪いというよりは「奥が深すぎて心理的アプローチまではマスターできていない」という状況でしょう。
臨床動作法は比較的新しい学問ですのでまだまだ専門の先生は少ない状況です。熟練した先生に診てもらえる可能性や時間は短くなります。
「だからやめとけ」
って言ってるんじゃないですよ。
実際の臨床動作法の研修会で経験の少ない先生に当たることは必ずといってあるようです。
ただそれも見方を変えれば「先生を育てるため」でもあります。一概に悪いとも言えません。
ただ特別支援学校の現場では”素人同然”の先生もいるはずです。
「臨床動作法の良し悪しを判断するには熟練した先生に診てもらってからにした方がいい」といえるでしょう。
あと先生との相性もあります。これは私自身先生だったので分かるのですが、先生には各自「教育スタイル」というものがあって、それは変更できないものなんです。
私の教育スタイルが合う子もいれば、合わない子もいます。
それは相性といえるもので、合わないと離れるしかない、ということです。
同じようにいくら有名で立派な先生でも合わない子がいるはずです。
肩書等で判断せず「自分の子に合っているかどうか」で判断することが必要でしょう。※ちなみに「万能な教育方法はない」とお考えください。
これは臨床動作法の先生に取材して教えてもらったのですが、就学前の6歳以下のお子さんでも大丈夫とのことです。
臨床動作法の研修会を開いている団体が各都道府県に大体はあるので、問い合わせれば情報をもらえるでしょう、とのことです。
成人した人でもOKで実際に20歳以上の自閉症の人もおられるとか。
興味ある方はインターネットで『臨床動作法 都道府県名」で何らかの研修会にひっかかります。
また身体障がいの子が通う特別支援学校に問い合わせてみるのもいいでしょう。
判断するには実際受けないことには分からないので興味ある方は一度お試しを。