心を育てよう

NHKバリバラでドラマにもなった。滋賀県のやまなみ工房は幸せと感動を生みだす作業所だった話

更新日:

身近に通う人がいるならともかく、作業所ってイメージ湧きにくい人多いのではないでしょうか。

作業所とは障害ある人が通う就労先です。

特別支援学校(養護学校)に通っている子は卒業後の進路先となる場合が多いです。

 

作業所の仕事は様々ですが、一般的なのは下請け作業です。

ネジの袋詰めなど工場からの下請けや商品を入れる箱の制作やリサイクル作業など。

 

個人的に作業所って”慎ましく経営している”イメージがありました。

 

そんなイメージを覆す、ものすごい作業所を見つけてしまいました。

いわば作業所のイノベーション。※イノベーション=革新

 

その作業所は滋賀県甲賀市にあるやまなみ工房さんです。

やまなみ工房さんはNHKのバリバラという番組で「アタシ・イン・ワンダーランド」というタイトルでドラマにもなっています。

また作られる作品は世界最高峰のファッション展示会であるパリコレクション(パリコレ)で取り上げられたりしています。

それ以外にも各メディアに多く取り上げられています。どこかでやまなみ工房さんをご存知の方も多いはず。

 

ただ私がやまなみさんへ行ったきっかけは単に『芸術作品をつくる作業所がある』という好奇心からなんです。

「へー。芸術作品つくる作業所があるんだ。見てみたい」というようなもの。

 

NHKのバリバラとかパリコレとか全然知らずに行ったんですよ。

 

想像していたのにはよくある作業所の形。

「下請け作業の代わりに芸術活動をしているのかな」程度のもの。

 

実際行けば予想はことごとく外れました。驚きの連続。

 

一つ例を言えば、やまなみさんには3度お邪魔させてもらいましたが、毎回見学の方が来られています。

来ている人は大学生、中学生の社会見学、お坊さんや福祉関係者など様々。

喫茶店で出会って名刺交換させてもらったりもしました。

 

連日見学者が訪れる福祉作業所ってあるでしょうか??

 

しかも見学に来られる方は福祉関係者や美術関係者ばかりではありません。

国内、国外も問わず本当に様々な方々です。

 

こんな作業所は初めてです。

 

今回かなり気合い入れて、大量の写真を撮ってきました。

やまなみ工房さんの魅力をあますところなく伝えられればと思います。

 

 ウェルカムボードのある作業所

駐車場に車を停めて降りてすぐのこと。

「ん?なんか違うな?」と感じました。

 

何がというとスタッフさんの雰囲気の良さです。

 

文字にすると『こんにちはー。ありがとうございます』といった普通のあいさつなんです。※料金を払う客でもない私に「ありがとうございます」と言えるのもスゴイと思いますけどね。

 

文字にすれば普通ですが、受ける印象が違います。

 

例えるなら「コンビニの店員のあいさつ」と「サービスの行き届いたお店のあいさつ」の違いです。

感覚的な話になりますが、コンビニ店員の「いらっしゃいませー」が心に刺さることってないですよね。

 

でも、やまなみ工房さんの挨拶は心に刺さるんですよ。

 

例えるなら、個人経営のお店や一流のお店での「心からの接客」を受けたときの感覚です。

 

「あぁ、このお店はお客さんのことを大事にしているんだな」

「楽しそうに仕事してるな」

そういった感覚です。

 

その感覚を私はやまなみ工房さんに感じたんです。

 

といっても文字で『心に刺さるんです』と言われても『ホントかな?』と思うでしょう。

 

やまなみさんの心遣いは目でも分かります。

まずはこちらをご覧ください。

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夢へのEn-Zin田中様

と書いてくれているのが分かりますでしょうか。

そうです。

ウェルカムボードがあるのです。

 

ここがレストランやホテルなら分かりますよね。

その場合、私は料金を払ってくれるお客様ですから。

「もてなす理由」と「利益」がそこにあるじゃないですか。

 

でもやまなみ工房さんは障害ある方が通う作業所。

私は何かしらの料金を払う客ではありません。

言ってしまえば私のような見学人は断っても構わないはず。

 

でも違うんですよ。

そんなことは考えていないんですね。

 

後述しますが、やまなみ工房さんに貫かれている理念は「目の前にいる人を幸せにしよう」というもの。

だから私のような見学人にもウェルカムボードで出迎えてくれているのです。

 

ボードだけじゃないんです。

やまなみ工房さんには喫茶店があります。ここにも気持ちが表現されていました。

 

喫茶店の中はこんな感じ。

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入ってビックリだったのですが、テーブルの上にプレートが置いてあるのです。

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『え?まさか』と思いプレートを見てみると・・・

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ボード以外にもこんな心遣いが。

ここまでくると感動です。

 

繰り返しますが私は料金を払うお客ではないですよ。ただの見学及び取材人です。

入場料払うわけではないですから。

事前に「○月○日に取材に伺います」とは伝えてはありましたが・・・もはやサプライズ演出。

 

こんな作業所みたことないです。

 

ここでは「目の前にいる人を幸せにしよう」という理念に溢れています。

儲かる、儲からない、効率の善し悪しとかそういうのではないんです。

 

「来てくれた人に喜んでもらうためには何をすればいいだろう?」という発想なのです。

 

挙げていけばキリがないくらいですが、喫茶店で昼食をいただきました。

注文したのはハンバーグカレーと食後にココア。

やっぱり食器やコップにも気を使っています。オシャレです。

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↓食後にココアを注文。

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ココアの容器も凝っています。目でも楽しませてくれます。

 

別の日に行ったときはケーキもいただきました。

キレイでオシャレ

味は工夫があって美味しい

お店の方の雰囲気も良い

 

三拍子そろっています。だから美味しくいただけます。

 

お客さんの中には『今度、孫連れてまた来ますね』という人もいるそうです。

『また来たいな』と思ったのは私も同様。思わせてくれる理由があります。

 

それは時折、喫茶店に訪れる利用者さんとスタッフの方々。

喫茶店の中で交わされる利用者さんと

スタッフさんとのやりとりが暖かく、見ている者の気持ちを和ませてくれます。

 

この喫茶店にはスターバックスやドトールでは絶対に味わえない空気があるんです。

そんな空気があるので、お客さんから『孫を連れてまた来ますね』というような言葉が出てくるのだと思います。

 

やまなみ工房さんの作品を紹介

まだまだ『見て分かる素敵さ』を感じてもらおうと思います。

 

やまなみ工房さんはその名の通り工房であり、芸術活動をされている利用者さんがおられます。

作品を一部撮影させていただきました。

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「あれ?なんか見たことある」と思う方もいるはずです。

この作品はNHKのバリバラでもよく使用されています。ホームページ画像にもなっていますよ。

 

続いてはこちら。

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右側の絵は動物のシルエットが大小カラフルにちりばめられています。

この方の作品はiphoneケースや靴下など商品化もされています。

 

続きましてこちら。

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スマホでは「なんだかよく分かんない??」となるかもしれないので拡大します。

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画用紙いっぱいに鳥の絵が描かれています。いや、ホントにスゴイ。

 

こちらはまた別の方の作品。恐竜の絵がカラーで描かれています。

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絵画だけではありません。粘土による工作や手芸もされています。

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↑NHKのバリバラのドラマでもありましたが、テーマは施設長の山下さんとのことです。

金額の話をするのも野暮ですが、この方の作品は20万円で取引された実績があります。

 

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↑粘土細工に細かい点々が刻まれています。15万円で取引されたことがあるそうです。

img_5698↑こちらは「まさみ地蔵」という名前があります。

これまでに通算4万個作られたそうです。4万個ですよ?全部並べてみたらどのようになるのでしょうか。

おひとつ300円からです。

 

絵画や粘土だけでなく手芸もされています。

「利用者さんのやりたいことを」という姿勢なので、それに合わせてジャンルも多用なのです。

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↑私これにすごく惹かれました。こういうの欲しい人絶対いますよね。

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↑ボタンを沢山つけての作品です。この方の作品は海外出展されてもいます。

 

パリコレなど世界的評価を受けているものも紹介します。

↓利用者さんの作品が実際の服になっています。

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言葉で表現すると「スゴイ」の一言ですが、見ていて迫るものがありませんか?

 

パリコレって世界最高峰のファッションショーですからね。

スケールが大きすぎてクラッと来てしまいます。

 

ただ『パリコレ』『世界的評価』『15万円、20万円で取引されている』という目立つ部分に注目したらある意味やまなみ工房さんには失礼なのかもしれません。

 

なぜかというと職員の方に聞いてみたのです。

 

「スゴイ作品ですね。利用者さんに対して特別な指導をされているのですか?」

返事は

何もしてないですよ。みんなが笑顔で満たされ自分の気持ちを楽しく表現できるかは考えていますけども」とのこと。

 

そうなんです。

やまなみ工房さんはパリコレや収益性のある作品作りを目指しているわけではないんです。

 

ただ目の前のいる利用者さんの幸せな一日を考えていたらこの形になっただけ。

収益性が上がったとしても、そこへの追求はしないんです。

 

あくまでも「利用者さんのやりたいことをやろう」と変わらない姿勢でいるのです。

一日数時間しか作業しない人もいます。創作自体しない人もいます。それでもいいんです。

 

記事冒頭で「ものすごい作業所を見つけた」と言った意味が分かっていただけたのではないでしょうか。

 

ウェルカムボードなどの細やかな心遣い

「利用者さんのためにならないから」ということで利益を追求しない姿勢

 

これら「目の前にいる相手のために」という理念の貫き方がものすごいのです。ブレを感じないのです。

 

やまなみ工房の施設長さんに伺いました

やまなみ工房の歴史や理念について施設長の山下完和(まさと)さんに伺いました。

こちら施設長の山下さんです。

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『なに!?』

と初めて山下さんを見た方は思うかもしれません。NHKのバリバラ番組内でもそんな描写がありましたね。

ここでもやまなみさんはよくある作業所のイメージを壊してくれています。

 

しかし施設長で社長でも、トップに最も必要なのは理念です。

外見はロックンローラーな山下さんですが内面は信念と慈愛、そして繊細な気配りの人でした。

実際お会いすれば分かると思います。誰よりも真面目な施設長さんなんですよ。

 

やまなみ工房の歴史と理念

やまなみ工房さんの歴史や当時あった問題点を教えていただけますか?

 やまなみ工房は1986年に開設され、初めは今のような形ではなく六畳二間の借家でした。当時のやまなみは一般社会における就労を理想としていました。給料を増やして経済的に自立することをめざしていたんです。

作業内容は1個1円に満たない内職仕事でしたが、給料は増え始めました。ただ同時に利用者さんには「こうしなければならない」「こうあるべきだ」という制限や制約を与える事になってしまったのです。

変わるきっかけは何だったのでしょうか?

 きっかけは三井啓吾さんという利用者さんとの出会いです。三井さんは18歳で養護学校(特別支援学校)を卒業しこちらへ入所されました。三井さんは自閉症として重度と言われる障害を持っていました。自分の想いを言葉で伝えたり、行動で伝えたりというのは難しい方でしたが、作業は指示された通りにこなされていました。

ある日三井さんが、たまたま落ちていたメモ用紙に鉛筆で何かを描いていたんです。僕はその描いていたものに対しては興味を示せなかったんですが、三井さんの描いているときの顔というのが初めて見るような楽しそうな嬉しそうな表情だったんです。そんな三井さんの顔をみて『こんな楽しい顔が出来るのであれば今している日常は一体何なのだろう』『普段は意志を表現することは少ないけど実はやりたいことや大好きなことがあるんじゃないか』そんなことを思いました。
それで今までの作業はやめてドライブに行ったり、公園に行ったり、畑に行ったり、粘土をしたり。そんな色んな事の中で三井さんが一番楽しそうにしていたのが粘土や絵を描くことだったんです。それから三井さんの一番やりたいことをやってもらうことにしました。直接お給料とかにつながったりはしないけど一日を楽しんで過ごせるならということで始まったのがスタートでした。
僕たちは三井さんの変化に「彼らの感じ方や考え方やもっとやりたいことがある」「その人らしく生きることを尊重し、一日が喜びと楽しみで満たされることが重要だ」ということを学びました。三井さんの姿に支援者として最も大切なことを気づかされたんです。

そこから下請け作業中心の生産活動から、表現活動に取り組むようになられたとのことですが、反対意見等はなかったのでしょうか?

 ありました。どれだけ本人が楽しそうに粘土をつくってもそれが売れるわけでも評価されるわけでもない。もっと文字の一つや手に仕事でも身に着けさせて欲しい、少しでも社会に適応できるように・・・などの周りの願いはありました。

ただこれまでの表情と違い、目の前にいる皆さんの笑顔が絶えまなく続いていたので、これを打ち消して周りの人の願いを応えるために頑張るのか、それともこの人たちの一度しかない人生の中で本当にやりたいことを見つけて一日を楽しめるように頑張るのか。
目先のお金よりこの人たちの人生の豊かさをもっと大事にしようと思いました。結果としては今のような状況になっていますが、まぁあの頃は色々ありました。

作品の発表の機会はどのようにして作ってこられたのですか?

 初めはもちろん誰もやまなみのことを知りません。また当時の障害ある人の作品への理解は今ほどではありませんでした。ほとんどは自分たちで色んな地方へ行って「実はこういうな人たちがこういう風な作品を作っているのですが発表の場がないのでこちらで展覧させてもらえないでしょうか」と頼んで回っていました。

ただ僕には美術や芸術の事など全く分かりませんし、販売目的だけで出会いを求めていたのでもありません。僕は作品を通して彼らの人間性を一人でも多くの方々に知ってほしかっただけなんです。なぜなら彼等が素晴らしい人格者であることを僕は何より知っていましたから。

大変なエネルギーが必要だったと思います。やまなみ工房の活動の原動力となるものは何なのでしょうか。

 目の前にいる人を幸せにしたいという想いです。私たちは利用者さんに作品を作ることへの強要はしません。全ての制約と制限を取り払い一人ひとりが穏やかに自分らしく過ごせる時間と空気を整えることを大切にしています。彼らがどうすればHAPPYな気持ちになれるのか、そのための好奇心と創造力ですかね。

やまなみ工房にはスタッフ間での3つの約束があります。
一つは物を大事にしようということ。物を粗末にする人は人も粗末にすると思うからです。
二つ目は人と接するときは何をおいてでも真心を込めて接ししようということ。自分がそうすることによって自分もそうしてもらえるからです。
三つ目は互いの悪口は絶対言わないようにしようということ。そうすることによって皆も僕も安心不安がらずにして過ごせるからです。

でもこれは全て利用者さんから学んだことなんです。指導者や支援者という人が利用者さんに何かをしてあげるとかしようとするのではなくて、彼らから必要とされる自分たちでありたいんです。

その想いがやまなみ工房さんの雰囲気を作っているんですね。

やまなみ工房さんは掃除やペットボトルの回収、古紙回収もされていますがこれも利用者さんの中にやりたい方がいるのですか?

 利用者さんに掃除するのが好きな人がいるんです。だから掃除の仕事を用意しました。ペットボトルの回収も同じ理由です。ボトルを口に当てるのが好きな人がいるんです。ならそれを仕事にしようということで街のリサイクル活動をしてもらっています。古紙回収も同じですね。新聞紙を破るのが好きな人にお願いしています。

施設や組織のシステムに彼らを一方的に当てはめるのではありません。彼ら一人ひとりの価値感や得意な事にあわせて臨機応変に施設のカラーが変わればいいんです。

利用者本位を貫かれていますね。

食堂や喫茶店のデザイン、調理員さんのエプロンに至るまでも凝っていると感じています。この辺りにもこだわりが?

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 こういうのがあったらみんなが喜ぶだろうな、と思って考えただけです。施設っぽくしたくなかった、というのもあります。せっかく魅力的なカッコいい人たちが働いているんだからいわゆる誰もが抱く概念の中の施設では彼らの魅力も台無しです。まず僕達が1つ1つ丁寧にそしてお洒落に楽しまないといけません。

個人的にはこれだけ理念の貫かれた作業所は見たことがありません。

貫くことの出来た理由のようなものを教えてもらえますか?

 「理念を貫こう」というより、僕はこのやり方しかできないですから。なにより同じ目的のベストメンバーがスタッフとしていつもベストを尽くしてくれるので不安など感じたこともありません。これからも目の前にいる人がどうすれば幸せになるかを考え続けています。利用者さんが一日を穏やかに過ごせるように、スタッフも穏やかに過ごせるようにと考えていますね。
世界一の福祉事業所なんて目指してません。ただ一人ひとりにとって世界一居心地のいい場所を目指しています。利用者もスタッフもここで働いてよかったと思える場所。自分も含めやまなみが愛する仕事、愛する場所になればいいなって思います。

誰でもみんな自分らしく生きたいんです。我々は利用者さんからそれを教えてもらっています。やまなみ工房はみんなにそれぞれ役割があります。我々に絵を描くことは出来ませんし、利用者さんが出来ないことは我々が頑張ります。工房にいるみんなが役割を全うしているだけですよ。

やまなみ工房さんは成人した方が通う場所ですが、もし目の前に障害ある子どもがいるとしたら何を伝えますか?

僕はやまなみのみんなからたくさんの事を教わりました。
自分に信念を持つ力、自分の弱さを見せる力、他人や社会のせいにしない力、

自分の意見を嘘偽りなく言う力、多様性を認め仲間の全てを受け入れる力、自分自身に満足し他人と比較したり競争しない力、「こうなければならない、こうあるべきだ」に惑わされず自分自身のために目的を持つ力

昨日を悔やまず、今日を始める力、いつもフルボリュームで自分をぶつけ、どんな時も楽しく生きる力。

全ては無我夢中のみんなに僕が教えてもらった大切なことです。

障害のあるお子様やご家族の皆様にはお伝えできることとしたら

「君はありのままの君でいいんだよ。」「君の価値観に正直でいいんだよ。」ってことですかね。

最後に山下さんの今後の夢を教えてください。

最大の夢はスタッフと利用者にとってやまなみを最高の場所にすることです。

その為には様々な役割があります。

今僕達がしている表現活動とは誰にも歪められず自分自身の世界を築く事だと思います。

彼等の苦手な事やネガティブなところばかり見つめるのではなく、得意な事、素敵なところを探しながらこれからも彼等と彼等の表現、そして作品を社会に発信することで、新しい価値観や芸術観が創りだされることを願っています。
福祉・・・障害者・・・アート・・・そんな言葉が必要のない社会。誰もが違いを認め尊重し、誇りを持って活躍できる場を、社会を目指すことが重要だと思います。

僕達が目指しているのは作品に対する芸術的評価の高まりだけではありませんし、その事により対価を受け取る事だけを重要としている訳ではありません。全ては彼等への正しい理解であり、障害のある人もない人もともに生きやすい心優しい豊かな社会です。一般社会の常識や価値観、ましてや芸術的価値に彼等や彼等の作品を一方的に導く事ではなく、多くの障害者が生きる尊厳を獲得する事なのです。

大切にしていることは人間関係であり何より信頼関係です。誰かが上位者に立つのではなく人と人としてお互いに敬意をもって過ごす。これがなければ何も生まれません。

信頼関係が最も重要であり、その上に様々な花が咲くのです。自らが大切な価値ある存在である。そう感じる事の出来る日常の中におかれてこそ、生きる喜び、表現する喜びが生まれるのではないでしょうか。

安心できる時間と空間。やさしい眼差しと嬉しい言葉、美しい真心が全てです。

今後も彼等一人ひとりの表現や人間性からみる様々な可能性が無限に広がり、人が生きる上で大切にしなければならないのは何なのか、全ての人々が大切にされる社会の実現のためには何が必要かを考え、個性豊かな活力に満ちた未来の実現を目指したいと思います。

一足飛びに叶う願いでない事は承知しています。ただ自分たちの出来る事、すべきことに一つずつ丁寧に向き合えば、必ず僕達の未来に繋がると信じています。彼等の表現そして人間力が社会を動かし、世界を必ず変えると確信しています。やまなみ工房にいる22人のSTAFFが根拠です。22人のスタッフがいないと実は僕は何もできません。その最高のスタッフと一緒にこれからも大きな目的に向かい様々な発信をすることが使命だと思っています。

その為に僕自身がまず、すべきことは、彼等を絶え間なく別の何かに変えようとする世の中で、目の前の彼等に対し、一方的な抑制をかける事をせず、制約と制限を与える全ての事を取り除き、ありのままの彼等が今日も笑顔で満たされ輝きを放ち続けられる環境を整える事だけです。

それぞれのHAPPYが、そして可能性が無限に広がる事。一人ひとりが健康で自分らしく心豊かに過ごせるために頑張ります。

僕達はなぜ今この仕事をしているのか・・・僕達の役割はなんなのか・・・僕達はどうあるべきなのか・・・すべては幸せを運ぶためです。

 

スタッフさんにも聞いてみました

やまなみ工房さんには施設長の山下さんの理念、そして慈愛が貫かれています。

ただ山下さんのインタビューにもあったように施設長だけが理念と慈愛を持って働かれているのではありません。

 

スタッフさんの心のこもった挨拶

喫茶店でみられた沢山の心配りと空気感

「利用者さんのために」を貫く作品作りに対する姿勢

 

工房内にいる沢山の人や場面から理念と慈愛を感じるんです。

 

お願いしてスタッフさんにもインタビューさせてもらいました。

 

スタッフさんの中で以前、違う作業所で勤められていた方がいました。

以前と今とでの職場の違いなどを聞いています。

 

ぜひ読んでください。

これから作業所へ通う予定のある人、現在通っている人、その職員さん。色んな立場の人の参考になると思います。

 

 

以前は違う作業所で働かれていたとのことですが、どんな作業所だったのでしょうか?

 内職の作業やパン作りをしている作業所でした。利用者さんを評価する仕組みがあって『どれだけ生産出来たか』を重要視している作業所でした。

そのころはどのような姿勢で利用者の方と接していたかを教えてもらえますか?

 利用者さんの評価がそのまま自分の評価のように感じていましたね。利用者さんが叱られていたら、自分のいたらなさを叱られている気分になっていました。だから積極的に「お仕事頑張りましょう」というような声掛けや姿勢になっていました。

・・・ということはやまなみ工房にきて初めはビックリしたのではないですか?

 しましたね(笑)初めは「え?これでいいの?」という気持ちがありました。以前いた所とは雰囲気がまるで違いましたから。ただ段々と「ここは一人ひとりが自分らしくいられる場所」「スタッフは利用者さんやそのご家族の皆様に幸せを運ぶのが仕事」と思うようになりました。

やまなみ工房で働き始めて利用者さんに対する姿勢は変わりましたか?

 以前は「どれだけ物を沢山つくれたか」という生産性で評価をしていました。今はその人の本質的な部分に向き合う事が出来ています。例えば私がモノを落としたら拾ってくれたり、元気がなければ心配してくれたり、そんな人間的な気持ちや優しさの部分を感じるようになりました。見返りとか関係なく喜ばせてくれる人が多いんですよ。

やりがいで言えばどんなのがありますか?

 「この人にとっての良い環境って何だろう?」と自分で創意工夫している時間が楽しいですね。この人はどうすればもっと喜ぶかな?とか、こんなことしたことあるかな?あんな場所にいったことあるかな?そんな好奇心からなるイマジネーション、例えば動物の絵を描いている利用者さんがいたんですが、本物の動物を観たことはなかったんです。「じゃあ本物を観ればもっとイメージが湧いて楽しく描けるんじゃないか」と一緒に動物園へ行ったことがあります。

その経験が利用者さんの作品作りに活かされたりするので、そんな時にはもちろんやりがいを感じます。ただ大事にしているのは絵が描けるかどうかではありません。それよりも様々な経験をすることで心が豊かになる事です。

最後に目の前に障害ある子や、その保護者さんがいたら何を伝えたいですか?

 お子さんと一緒に色んな所へ行ったり、いろんな経験をいっぱいしてください。ということですね。経験というのは女性であれば化粧したり、オシャレしたり。そんなことも大切だと思うんです。
「あれしなさい」「これしなさい」よりも色んな場所へ行って自由に見聞きすることや様々な体験を通してたくさんの自信も生まれます。無理なんじゃないか?駄目なんじゃないかと?と決めつけて躊躇せず大いにワクワクしながらいろんな事にチャレンジしてほしいと思います。

 

象徴的なエピソードを一つ

やまなみ工房さんは施設長の山下さんだけが「生産性で人を評価しない」「その人らしさを大切にする」といった理念を貫いているのではないのです。

 

スタッフさんも同様の想いで働かれています。

だから私は隅々までその理念を感じることが出来るんです。

 

そんな隅々までに行き渡っている理念を表すエピソードを一つ紹介します。

 

20年以上やまなみ工房に通っておられる酒井美穂子さん。

NHKのバリバラで、やまなみ工房さんを扱ったドラマに出演されていた方です。

 

酒井さんはいつも歩くとき「サッポロ一番」という即席麺の袋を離さずにいます。

食事中、お風呂に入るときでも変わらずです。

 

酒井さんはこれまで粘土も絵も描いたことがありません。

 

しかしスタッフさんはそれを取り上げることも、何かしらの生産活動を求めることもしません。

ありのままの酒井さんを尊重しているからです。

 

ただここまでは他の作業所等でもありうる光景かもしれません。

生産活動をしない利用者さんは他の作業所でもいますから。

 

ただやまなみさんはちょっと違うのです。

目で見て酒井さんへの想いと理念が分かるものがあります。

 

こちらです。

酒井さんが握りしめたサッポロ一番の即席麵を保存しているのです。

また一つ一つに付箋で日付を貼っています。

 

なぜならそれが酒井さんの表現だから。

 

これが生産性を重視する作業所であれば即席麺は「無意味なもの」ということで破棄されるでしょう。

でもやまなみ工房さんは違うんです。繰り返しますが生産性や利益ではないんです。

 

大切にしているのは「その人が何をしたいのか」ということ。

 

20万円の値段がついた作品も、握りしめ皺になったサッポロ一番もやまなみさんにとっては同じ価値なんです。

 

やまなみ工房さんは「これがあなたの幸せです」「これが正しい生き方なんです」と施設側が決めていません。

 

「何をすることがあなたにとっての幸せですか?」という姿勢を貫かれているのです。

その姿勢が酒井さんが握りしめたサッポロ一番に付箋で日付を貼り、保存していることにつながっています。

 

酒井さんが大切にしている事、大切な物は、スタッフにとっても大切な宝物なんです。

 

やりたいことをやるのがなぜ幸せなのか

「やりたいことをやるのが大事」というのは多くの方が納得することだと思います。

 

ただ「生産して世の中に貢献することも大事なんじゃないの?」という考えの人もいるでしょう。

 

ここからは私の個人的見解となります。

スポーツ選手やミュージシャンなど好きなことを仕事にしている人がいます。

例えばイチロー選手です。

 

イチロー選手は「50歳まで選手を続けたい」とテレビで言っていました。

 

イチロー選手の打席に立つ姿、塁を走っている姿、ボールを投げている姿を思い浮かべてみてください。

大好きな野球を毎日やっている姿をみて『あぁ、イチローは幸せなんだろうな』と思ったことないですか?

 

同じ例として歌手の平井堅さんをあげます。

『瞳を閉じて』『大きな古時計』などの名曲で知られる方です。

 

平井堅さんは自らを『歌バカ』と称しているそうです。

とにかく歌うのが大好きでオフの日もカラオケで歌っているとか。

 

そこまで好きになれる歌で生活できるなら素敵じゃないですか。

 

実は誰もが憧れる生き方であるはずです。

 

やまなみ工房さんはそんな生き方を尊重しているのだと思います。

 

イチロー選手は野球でした。

平井堅さんは歌でした。

やまなみ工房の酒井さんはサッポロ一番を握り見つめることでした。

 

みんな自分のやりたいことを見つけたんです。

目に映る形は違えど、そのやりたいことから得られている幸福感は同じものです。

 

違いをあげるとしたら生産性です。

ただイチロー選手や平井堅さんは生産性のために野球や歌を歌っているのはないでしょう。

彼らは自分のやりたいことを見つけたから、ただそれを追求しているだけなのではないでしょうか。

 

もちろん二人とも社会貢献されています。

それでも「社会貢献しよう」と思って野球や歌を歌っているわけではないはずです。

 

社会への貢献や生産性を理由に個人の幸せや、やりたいことへの追求を諦める必要はないと私は思います。

『世の中を良くするために』という意味でも実は真逆で、もっと個人の幸せや、やりたいことを見つけることが世の中を良くすることにつながると私は考えます。

 

理由は二つです。

一つはやりたいことを追求することで、その人の力は最大限に発揮されるということ。イチロー選手のパフォーマンスや、やまみさんの作品が良い例です。

二つ目は自分が幸せでないのに、他人に優しく、世の中に貢献しようと思える人はいないからです。

 

誰でも世の中への貢献はそれぞれ自分のできる範囲でやっているはずです。

障害ある人も同じです。

自分のできる範囲でやればいいのだと思います。

 

障害ある人が望む福祉とは、を考える

私は過去最高の意欲で今回の記事を書いています。

『この内容でいいんだろうか』そう思って記事は何回も書き直して2ヶ月悩みました。

 

施設の外観写真の写りが悪かったので、撮り直しにもう一度やまなみさんにも訪れました。

こちらをご覧ください。利用者さんがスタッフさんのために傘を差しています。

1枚目の外観写真を撮ったのは雨の日でした。

傘が自分よりも相手の方に向けられている素敵なショットです。想いが伝わります。

雨のおかげでこのような素晴らしい写真が撮れたのですが、この日の外観写真は暗い印象だったのです。

 

『この記事は妥協してはダメだ』

そう思ったので晴れた日に撮り直しに行きました。

 

 

断言します。障害ある人が望む福祉とはやまなみ工房さんの姿にあるんです。

 

「その人にとっての幸せとは何なのか」

「どうすれば幸せになれるのか」

答えは世の中の常識や他人の価値観にあるのではないんです。

 

『地位や名声などのステータス』『お金』『世の中への貢献』

そういったものではなく、本人自身の価値観です。

 

例にサッカーの三浦知良選手をあげます。

photo by https://qoly.jp/media/c765e1f1-9c3a-41e9-92ec-848a710c7154?w=800

 

三浦選手は現役ですが、年齢はもう50歳になろうとしています。

サッカー選手のピークは30歳前後です。50歳なのだからピークはとうに過ぎています。

 

三浦選手は15歳のとき単身でブラジルへ渡りプロ契約を結び、レギュラー獲得まで至った実力者。

また大変な人格者であることも知られています。

 

実力と人格から言えば『三浦選手に教えを請いたい』と思う人は必ずいます。

監督や指導者になって欲しい人は大勢いるはずです。

 

失礼な話かもしれませんが、日本のサッカー界から言えば監督や指導者になる方がより貢献できるでしょう。

収入や名声も上がるかもしれません。

 

でも三浦選手は「サッカーがやりたい」という意思のもと選手を続けています。

 

そんな三浦選手をどう思いますか。

「選手でいるより、指導者になる方が世の中に貢献できる。収入も名声も上がる。だから引退するべきだ」

と思うのか

「そこまでサッカーが好きなら現役でいるべきだ」

と思うのか。

 

『名声や地位などのステータス』『収入』『世の中への貢献』

それらを理由にサッカーを辞めたら三浦選手はきっと後悔する、幸せでなくなると思いませんか。

 

『自分はサッカーがしたいんだ』

そう思うのならサッカーをすべきです。それが三浦選手の幸せでしょう。

 

やまなみ工房の利用者さんも同じなんです。

 

『絵を描きたい』

『粘土や工作が好き』

『サッポロ一番の袋を握り、見つめていたい』

 

それぞれ心に思う『やりたいこと』がはっきりとあるんです。

見つけたのならそれをすればいい。

 

やりたいことが分かったのなら、みんなそれを追求したいんです。

夢中になれている時間、それがその人にとっての幸せな時間なんです。

 

『利用者さんのやりたいことを全力で応援する』

 

今、世の中に足りていない目指すべき障害者福祉とはこの姿勢なんです。

 

そう断言できるのは私自身10年以上障害者福祉の世界にいて、やりたいことや夢が見つからない障害ある人が非常に多いこと。

夢を見つけたとしてもサポート環境がなく、諦める人が多い状況を目の当たりにしてきたからです。

 

『死んでしまいたい』

『生まれてきたくなかった』

そんなことをもらす障害ある人たちに私は仕事を通して出会ってきました。

 

しかし彼らは、今はそんなことを言いません。

それは自分のやりたいことを見つけ、自信を取り戻し、将来に対し夢を抱けるようになったからです。

 

やまなみ工房さんのような作業所が増えれば、世の中はもっともっと良くなります。

 

施設長の山下さんの『誰でもみんな自分らしく生きたいんです』という言葉を思い出してください。

 

私には夢があります。

この記事を読んでいるあなたにも夢があるはずです。

あなたの周りにいる人たちにもそれぞれの夢があります。

 

その夢が自分らしさです。

 

障害ある人も同じなんです。夢があるんです。

でもそれが言えなかったり、自分一人の力では叶えられなかったりするんです。

 

今、障害ある人”本人”が望む福祉とは『自分の夢を全力で応援してくれる福祉』です。

であるならば私たち障害ある人をサポートする立場にある人間は、これから何をするべきでしょうか。

 

ここは毎日幸せを生み出すやまなみ工房

記事冒頭で「やまなみ工房は作業所のイノベーションだ!」と言いましたが、当のやまなみさんは革新を起こそうと気張っているわけではありません。

 

ただシンプルに目の前の利用者さんを幸せにするため。

 

ここでは寝そべって絵を描く人や一日1時間しか創作活動をしない人や、創作活動そのものをしない人もいます。

みんながやりたいことをやっています。それは人から賞賛される『立派な姿』ではないのかもしれません。

 

でもここに通う利用者さんは日々を幸せを感じながら過ごされています。

誰かに決められた人生ではなく、自らが望む人生を歩んでいるからです。

 

私はやまなみ工房さんから沢山の学びと感動をいただけました。

 

自分らしく生きるってなんだろう?

幸せってなんだろう?

「目の前にいる人を幸せにするために」そんなことを考えて仕事をしてきたんだろうか?

 

そんな頭に浮かんでは、すぐに消えてしまう問いへの答えが、ハッキリと分かる形で表現されています。

 

滋賀県にあるやまなみ工房さん、見学は平日の開所時間に受け付けてくれます。

 

見学者向けに喫茶店やギャラリーもあります。

訪れた人を暖かく迎えてくれる施設長やスタッフの方々がいます。

 

私はこのやまなみ工房さんの存在をより多くの人に知ってもらいたいと強く願っています。

 

興味をもたれた方は是非一度訪れてみてください。

きっとあなたの人生に沢山の学びと感動を与えてくれますよ。

他にはこんな記事もあります。

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